起業家

2025.07.30 15:00

コード生成AI・バイブコーディングブームで見えた、「ソロ起業家」が生むビジネス

Mininyx Doodle / Getty Images

Mininyx Doodle / Getty Images

ホームページ作成サービス大手Wixは先月、小規模な人工知能(AI)スタートアップのBase44を現金8000万ドル(約118億円)で買収した。創業者が1人で初期のプロトタイプを立ち上げたBase44は、設立当初は伝統的なエンジニアリングチームを持たず、コード生成AIツールとAPIのみで製品を送り出した後に、8人のチームと、従来型のソフトウェア開発の仕組みをほとんど使わずに構築された完全なプロダクトへと成長した。

この買収が注目された理由は、その金額のみではなく、そのプロセスにあった。Base44はベンチャーキャピタル(VC)から資金調達を行わず、シリコンバレーの標準的なやり方から距離を置いた。同社は、適切なコード生成AIプラットフォームを使えば、少人数のチームでもスケーラブルなプロダクトを構築可能で、大規模なユーザーベースを構築して企業価値を高められることを証明した。

そして、スタートアップ界全体で、このモデルが浸透しつつある。技術的なバックグラウンドを持たないクリエイターたちが、AIモデルのカスタマイズやホスティング、デプロイメントを簡素化するプラットフォームを使って、収益化可能なツールを次々と立ち上げている。かつては開発チーム全体で取り組む必要があったようなプロジェクトが、今ではノートパソコンとターゲットが明確なアイデア、そしていくつかの強力なAPIだけで実現できる。

この変化は、単に技術面にととまらず、経済的な側面も大きく変えている。AIインフラのコストが高く、開発者の人材も不足している中で、コード生成AI・バイブコーディングプラットフォームは新たな起業のムーブメントを起こしている。より多くの人々が、独自のニッチな知識を使えるモデルに変化させ、それらを販売して、数カ月あるいは数週間で採算ラインに乗せることが可能になっている。

クリエイターが独自のプロダクトを生み出す

「本当のブレークスルーは、ユーザーが単にAIにアクセス可能になることではなく、AIの所有者になることだった」と語るのは、コード生成AIプラットフォーム「Vertical AI」の創業者のマヌーク・テルマーテンだ。同社のプラットフォームは、自然言語を記述するだけで、AIモデルのファインチューニングやデプロイ、収益化を可能にする。Vertical AIのユーザー数は、わずか3カ月で3万人に達し、現在では月間10万件以上のプロンプトを処理している。

その核となる魅力は、テルマーテンが「クリエイターの主権」と呼ぶコンセプトにある。ユーザーはAIと対話するだけでなく、AIを形成する存在になるのだ。彼らは、直感的なインターフェースを通じて、特定のタスクや対象に合わせたカスタムモデルを構築し、分散型コンピュートで実行し、成長中のマーケットプレイスでその成果を収益化することができる。

「我々はまず、実際の問題解決にフォーカスした。プロダクトが機能しなければ、コードがどれだけきれいでも、トークン設計がどれだけ巧みでも意味がない」とテルマーテンは語った。

この考え方はより大きなトレンドを反映している。CoinGeckoの2024年第1四半期レポートによれば、Web3プロジェクトのうち継続的なユーザー活動や収益を持つものは、全体の15%未満にすぎないという。一方で、Vertical AIやBuilder.ai、MindStudioといったコード生成AIツールは、実際の問題解決によって本当の支持を得ている。

次ページ > 「ソロ起業家」の時代が始まった

編集=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事