職場ではしばしば、声の大きさがものをいう。最初に言葉を発し、最も多く話し、周囲に指示を出す人は、リーダーの素質があると見られがちだ。しかし、リーダーシップは「音量」だけで決まるものではない。
最も有能なリーダーのなかには、寡黙な人が少なくない。彼らは他人の話をさえぎらない。会話の主導権を握ろうともしない。それでも、彼らは意思決定に影響力を持ち、進歩を主導し、周囲の人々から心からの尊敬を集める。
ソフトに話す人のリーダーシップは、過小評価されがちだ。多くのプロフェッショナルは、いっぱしの人物と認識されるためには、自身の立ち居振る舞いに権威をまとわせる必要があると思い込んでいる。だが、影響力は声の大きさで決まるわけではない。重要なのは、必要なときに、どのように自身に注意を引き付けるかだ。
声の大きさとリーダーシップがイコールではない理由
多くの人は、部屋のなかでいちばん声が大きい人が最も有能なリーダーだと錯覚している。自信と能力を取り違え、存在感と権威を混同しているのだ。しかし、本物の影響力は、音量とは関係ない。重要なのは信用できることだ。そして、信用の基礎をなすのは、どれだけ頻繁に発言するかではなく、発言内容のインパクトだ。
穏やかに話すリーダーは、違ったアプローチをとっている。自分が話す前に相手の話を聞く。反応する前に情報を処理する。だからこそ、いざ議論に貢献するとき、彼らの言葉は重みをもつ。最も声が大きいからではなく、最も熟考された意見を述べるからだ。
リーダーによる穏やかなアプローチは、チームのダイナミクスをも変化させる。職場では往々にして、声の大きい人がそれ以外の意見をかき消しがちだ。だが、リーダーがソフトに話せば、異なる意見が生じる余地が生まれる。
彼らは、モノローグではなく、ダイアローグ(対話)を促すのだ。彼らは人々に、自分の意見が尊重されていることを実感させる。そして、チームの誰もが話を聞いてもらえていると感じるとき、パフォーマンスは向上する。最も発言力がある人だけでなく、全員が実力をいかんなく発揮できるのだ。どうやってたくさん話すかよりも、自分の発言力を、チームのプラットフォームづくりにどう生かすかを考えよう。
ただし、自信に満ちた態度や発言力がものをいう場面もある。危機管理、重要な交渉、職場で起こった深刻な問題への対処といった状況では、リーダーは場を仕切り、議論の主導権を握る必要がある。穏やかなリーダーは多くの場面にうまく対処できるが、これに加えて、必要に応じてギアを切り替え、権威を示す術を身につければ、さらに有能なリーダーになることができる。



