米国の多くの労働者において、インフレの進行が賃金の伸びを上回っていることがIndeedの調査で明らかになった。特に低所得および中所得層の人々が、最も強い圧力を感じている可能性が高いという。
Indeedによれば、昨年は米国人労働者の57%の購買力が上昇した一方で、残る43%は生活費の上昇に追いついていない状況である。
年間の賃金上昇率は依然として年次インフレ率(6月時点で2.7%に上昇)をわずかに上回ってはいるものの、「両者の差は過去12カ月で最も小さくなっている」とIndeedは指摘する。
アトランタ連邦準備銀行の賃金動向トラッカーのデータによれば、通常の市場環境下では、過去数年間において賃金の伸びがインフレ率を上回る傾向が続いていた。
「賃金帯が低〜中程度の仕事」は購買力の低下による打撃を最も受けやすいとされるなか、高所得層の賃金は過去1年で最も速いペースで上昇してきた。ただし、Indeedは、これら高所得職の年次賃金成長率もここ数カ月で減速していると補足している。
全体としては、Indeedは「賃金の伸びは依然として健全で、インフレを上回っている」と述べているが、低賃金および中賃金の仕事では、インフレと同程度あるいはそれ以下の伸びにとどまるケースも多いという。
最も賃金が伸びている職種は?
Indeedのランキングによれば、電気工学系の仕事が「年次の賃金成長率が6.3%で、平均を大きく上回る」数字を記録し、トップとなった。これに続くのは以下の職種である。
・法務関連(5.1%)
・マーケティング(5.1%)
・プロジェクトマネジメント(4.6%)
・数学関連(4.5%)
・ITオペレーション(4.4%)
最も賃金の伸びが鈍い職種は?
最も賃金の伸びが小さかったのは医師および外科医で、年次の賃金上昇率は0.8%にとどまった。これに続くのは以下の職種である。
・ドライバー職(1%)
・芸術、エンタメ関連(1.2%)
・ソフトウェア開発(1.4%)
・美容、ウェルネス(1.6%)
・物流支援(1.7%)
今後の注目点
ドナルド・トランプ米大統領の関税政策が米国の家計に与える影響が注視されている。今月発表されたイェール大学の報告書によれば、この政策により米国の一般家庭は今年、追加で2400ドル(約35万円)の負担を強いられる可能性があるという。関税は、短期的に消費者物価を1.8%押し上げる可能性があり、失業率の上昇やGDPの減少といった経済的影響も予測されている。
新型コロナウイルスのパンデミック初期から経済が回復する過程で、低賃金の仕事は大きな賃上げを経験し、アトランタ連邦準備銀行のデータによれば、2022年10月には年次で7.5%という高い賃金成長率を記録していた。しかし、その数字も先月時点で3.7%と鈍化している。
6月のインフレ率である2.7%は、2月以来の高水準である。トランプはインフレ率が連邦準備制度(FRB)の長期目標である2%に近づいていることを理由に、FRB議長のジェローム・パウエルに利下げを求めている。ただし、AP通信は「中央銀行が現行の金利水準を維持する可能性が高まっている」と報じており、その背景には、パウエルがトランプの関税政策による影響を見極めようとしている意向があるという。



