映画

2025.07.30 15:00

映画は墓地で仮装して観るのがLA流? 口コミで人気の屋外イベント「Cinespia」とは

Cinespia特別上映会・2021年7月撮影(Photo by Matt Winkelmeyer/Getty Images)

──初期の段階で「これは想像以上に大きな成功になる」と感じた瞬間は?

advertisement

最初の上映の時点で、すぐに成功を確信したよ。上映が終わったときの拍手を聞いて、「これはいける」と思った。そこから口コミが一気に広がっていった。このイベントが他にないもので、風変わりな場所で開かれていることも人々の興味を駆り立てた。僕らは、一切伝統的な広告を出さなかったし、今でも出していない。でも、口コミのパワーがとにかく強力で、自分は行ったことがなくても、友達から話を聞いているという人は多い。それがイベントの成功の大きな要因になった。

だから、最初は偶然だったかもしれないけど、それを生かしてビジネスの一部にした。昔、NBCの朝の情報・ニュース番組『トゥデイ・ショー』から出演オファーが来たことがあったけど、口コミの魔力が壊れると思って断った。そのせいか、もう二度と声がかかっていないけどね。

──でも、あなたたちには超ロイヤルでクールなファンがついていますよね。過去への敬意と、若い観客へのアピールをどうやって両立させているのですか?

advertisement

映画のまわりにいろんな追加の要素を付け加えることで、作品の魅力を持続させていると思う。上映前にDJが音楽を流して、流行のレストランが食事を提供して、洒落たライティングも施している。1回のイベントで使う照明は70台以上。映画界のスターやセレブが、サプライズで登場することもある。そうした演出で、すごく『バズる』雰囲気を作っている。

この15年間、毎回のイベントで、映画ごとにカスタマイズしたフォトスタジオを自前で作ってきた。セットや小道具、プロ用の照明、カメラマンをそろえて、その場で美しい写真をプリントして渡している。これが無料で提供されていて、とても人気がある。毎晩1000人以上のゲストが写真を撮っていくんだ。フォトスタジオがあるおかげで、みんなが衣装やファッションに凝るようになって、それが観客全体のルックの基準を作っている。パーティーフォトグラファーのケリー・リー・バレットが撮った素敵な写真がSNSやウェブサイトに掲載されることで、「私も行きたい!」と思う人がどんどん増えている。

──それで、映画も上映してるんですよね?

はは、そうだね。映画そのものも観客を引き込むものでなきゃいけないし、新鮮で現代的な感覚が必要だ。4000人の観客の心をつかむ映画を見極めることが、僕らの秘密のソースで、それがリピーターを生んでいる。24年間このイベントをやってきたおかげで、Cinespiaと一緒に大人になったという観客も多い。親が好きだった映画が、今では子どもたちのお気に入りになってるし、すでに自分の子どもを連れてきてる人もいると思う。

子どもの頃に観た映画には、特別な力がある。僕たちは昔の名作に観客を引き付けることが大好きだし、彼らが好きな最近の良作も定番にしていく。そのうえで、常に観客の立場からイベントを設計してきた。それがCinespiaを時代に合った、楽しくてインスピレーションを得られる場所に保つための原動力なんだ。

──今後のCinespiaはどこに向かいますか? 新しい会場ですか? それとも3D映画の上映のような展開でしょうか?

これまでも、ロサンゼルス州立歴史公園やグリフィス・パーク、ダウンタウンの1920年代の映画館、そして今ではローズボウルなど、歴史的な場所でCinespiaの上映会をやってきた。これらはすべて、ロサンゼルスの歴史と結びついた価値ある場所だ。それに加えて、他の都市や国の人たちにも地域で忘れられない映画イベントを作る方法を教えていけたらと思っている。このイベントを通じて映画館に足を運ぶという楽しみを、世界中で長く愛される文化として残していきたいんだ。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事