トランプ減税が議会を通過して、7月4日の独立記念日に施行された。
法案自体は、前回のトランプ政権時とあまり変わりはないが、例外があり、それがチップに対する非課税措置だ。
年間所得が15万ドル以下の人が受け取ったチップについては非課税にするというもので、個人消費が経済を支えているとされるアメリカでは大きく報道され、反響が大きい。
まもなく夏休みでアメリカに旅行に行く読者も多いことと思うが、米国内では「チップ・ショック」とも言うべき異変が起きており、この非課税措置がさらにチップ文化を加速すると考えられているので注意を喚起したい。
30%のチップ設定も珍しくない
どんなことが起こりうるかと言えば、もっともっとチップを払わされる文化に変わっていくということだ。
4年か5年前はまだ少数派だったが、クレジットカード支払いの際に決済タッチパネルに現れてくる「チップをどうしますか?」という金額選択画面が出てくるシステムは、いまや全米どこへ行っても見かけるスタンダードとなった。
つまり、長年、サービスに対する満足度と感謝を示すためのチップという文化は、ここにほぼ失われ、「お金を払うときに追加で発生するコスト」=「二重請求方式」=チップというふうになったと言っても過言ではない。
「それって消費税とどう違うの?」という皮肉の1つも言いたくなるが、アメリカ中どこを探しても、25パーセントもかかる消費税は存在しない。
逆に言えば、サービス業の現場では、賃金の多寡で採用が決まるというより、「チップが稼げる職場かどうか」が採用活動の肝となっている。
ところで、チップをもらう側の現場では、もらった総額を全員で報告して申告し合い、その合計金額を人数で割るというのがアメリカ式で、ほとんど例外はない。
ただし、サービススタッフとキッチンの人員とでは、7対3や8対2といった比率で分けるのが一般的だ。
前出のチップ料率選択画面は、初めは「10%・15%・20%」というものだったが、いまでは「15%・20%・25%」と変化し、なかには「20%・25%・30%」というものまである。チップの料率は店側が自由に設定できるのだ。
6年前はそれでも「NONE(ゼロ)」を選ぶ人もいたが、いまではファーストフードでさえ、ゼロを選ぶ人をほとんど見かけない。
こうして「Tipflation(チップフレーション)」と「Tip creep(チップのじわじわ拡大)」という現象が起こってきた。つまり、チップそのものの料率が上がり、対象範囲も拡大しているのだ。
近年のアメリカでは、チップの対象がレストランやタクシーだけでなく、スマホ注文のコーヒーショップやセルフレジにまで拡大。さらには、これまで関係のなかった医療クリニックなどでも「チップをどうしますか?」と要求される機会が増えてきている。
世論調査の「Pew Research」によれば、米国成人の約72パーセントが「5年前よりチップを求められる機会が増えた」と答えている。
これらの現象は、CloverやSquareなどのデジタル決済端末の普及によって加速していて、画面で提示されると断りにくく、前述のようになかには「30%」ものチップ設定も珍しくない。



