北米

2025.07.28 17:00

米パラマウントの新トップに就任、「オラクル創業者」エリソンの息子はどんな男か?

2006年にスカイダンスを設立―父親が資金援助、ジョブズがメンター

エリソンは、父親の資金援助を受けて2006年にスカイダンスを設立した。2022年にカラ・スウィッシャーが執筆したニューヨーク・タイムズ(NYT)の記事では、父の親友の1人でもあったスティーブ・ジョブズが自身にとって重要なメンターだったと語っていた。ジョブズは当初、「うまくいかないだろう」と彼に言ったという。しかしその後ジョブズは、「また、ここに来て、君たちがどうやって最高の映画を作り、誰よりも素晴らしいストーリーを伝えようとしているかについて話を聞かせてほしい。僕らは、ピクサーでそれをやったんだ」とエリソンに伝えたという。彼は、2009年に父からの出資も含めて3億5000万ドル(約516億円)を調達し、パラマウントと5年間の共同製作契約を結ぶための資金に充てた。

金に物を言わせてハリウッドに入ったが、実力でそこにとどまった

一方GQ誌の記事でアクナーは、エリソンについて「金に物を言わせてハリウッドに入ったが、実力でそこにとどまった人物」と評していた。エリソンが初めて大ヒットさせた映画は、スカイダンスにとっての2作目、コーエン兄弟によるアカデミー賞ノミネート作『トゥルー・グリット』だった。製作費が3800万ドル(約56億円)のこの映画は、世界で2億5000万ドル(約368億円)の興収を上げた。

エリソンはその後大作路線に転じ、スカイダンスの3作目『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』は、1億4500万ドル(約213億円)の製作費に対して7億ドル(約1029億円)近くを世界で稼ぎ、この作品を含めて合計5本の『ミッション:インポッシブル』シリーズを手掛けている。このシリーズは合計33億ドル(約4851億円)以上の興収を世界で記録している。

またスカイダンスは、アカデミー賞にノミネートされた2本の『スター・トレック』シリーズを製作した。製作費1億8500万ドル(約272億円)で興収4億6700万ドル(約686億円)の『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(2013年)、製作費1億8500万ドル(約272億円)で興収3億4300万ドル(約504億円)の『スター・トレック BEYOND』(2016年)だ。

さらに『ターミネーター:新起動/ジェニシス』(2015年)は商業的成功を収めたが、『ターミネーター:ニュー・フェイト』(2019年)は大コケし、パラマウントとスカイダンスに1億2000万ドル(約176億円)以上の損失をもたらしたとされている。スカイダンス最大のヒット作は、『トップガン マーヴェリック』で、これは映画史上14番目に高い興行収入を記録した作品でもある。スカイダンスの評価額は、パラマウントとの合併契約で47億5000万ドル(約6983億円)とされていた。

エリソンの政治的立場とトランプとの関係

エリソンは2024年、バイデン前大統領の再選キャンペーンに約100万ドル(約1億4700万円)を献金したが、その後バイデンは選挙戦から撤退した。彼は、パラマウントとスカイダンスの合併交渉が進む中、今年初めに開催された格闘技UFCのイベントで、トランプ大統領の近くに座っている姿を目撃された。トランプは、エリソンによるパラマウントの買収を称賛していた。

「エリソンは素晴らしい。彼はきっといい仕事をする」トランプは6月に記者団に語っていた。エリソン率いるスカイダンスは、CBSのニュース番組について「思想的偏り」への苦情を受け付けるオンブズマンを設置することをトランプ政権に約束した。また、多様性・公平性・包括性(DEI)ポリシーを撤廃することも約束している。この動きは、FCCからの合併の承認を得るためにトランプ政権の意向を汲んだものであることは明らかだ。

ラリー・エリソンは、長年の共和党の支持者でトランプの支援者

エリソンの父親ラリー・エリソンは、長年の共和党の支持者でトランプの支援者としても知られている。

2020年に、ラリー・エリソンはフォーブスの取材に対し、トランプに政治献金を行ったことが一切ないが、自身が所有する不動産を資金集めイベントの会場としてトランプに貸したことがあると述べていた。「私は彼を悪魔だとは思っていない。彼を支持しているし、うまくやってほしいと思っている」と、彼は語っていた。また1月には、他のテック企業のCEOとともにホワイトハウスを訪れ、人工知能(AI)への投資についてトランプと会談していた。

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編集=上田裕資

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