東京とサンフランシスコを拠点とする、人工知能(AI)を用いて企業の法務業務を効率化するスタートアップ、LegalOn Technologies(リーガルオンテクノロジーズ)は7月24日、ゴールドマン・サックス・オルタナティブズのグロースエクイティ部門が主導した資金調達ラウンドで、総額71.4億円を調達したと発表した。
今回のシリーズEラウンドには、日米双方に拠点を置くベンチャーキャピタル(VC)のWorld Innovation Lab(WiL)、法律事務所の「森・濱田松本法律事務所」、みずほ銀行、商工組合中央金庫らも参加したとLegalOnは24日に発表した。これにより、同社の累計調達額は約286億円に達した。
また同社は同日、ChatGPTの開発元OpenAIとの戦略的パートナーシップを通じて、法務に特化したAIエージェントを開発すると発表した。この提携でLegalOnは、自社のリーガルデータとChatGPTのエンタープライズ版を組み合わせ、企業の法務業務の効率化を図る。
7000社以上の企業が導入されている、AIを用いた契約書レビューツール
LegalOnは、森・濱田松本法律事務所に勤務していた弁護士の角田望と小笠原匡隆が2017年に設立した。同社開発のAIを用いた契約書レビューツールは、法的リスクを特定してその深刻度に応じたランク付けを行い、50人以上の弁護士が作成したガイドラインをもとに改善提案を行う。現在7000社以上の企業に導入されている。
このツールを用いると、従来は手作業で行われていたプロセスに必要な時間を最大85%短縮できると同時に、正確性も向上させられるという。Slackやメールなど複数プラットフォームを横断して契約依頼を追跡し、進捗を管理する機能も備えている。
エージェント型AI製品の開発
LegalOnは、今回の調達資金について、エージェント型AI製品の開発、米国および英国市場でのプレゼンスを拡大するために用いる。
「当社は創業以来、企業の法務部門の業務を効率化し、リスクを軽減し、ビジネスへのインパクトを高めるためのソリューションの開発に注力してきた」と、LegalOn共同創業者でグループCEOの角田は語った。「OpenAIとの協業によって当社はイノベーションの最前線に立ち、信頼性の高いAIによって法務業務を変革する取り組みを加速させる。これにより、顧客の高い期待に応えるさらに進化したツールを提供していく」。
LegalOnの前回の資金調達は2022年で、ソフトバンクのビジョンファンド2が主導するシリーズDラウンドで137億円を調達した。このラウンドには、中国のビリオネアのニール・シェンが率いるVCの紅杉資本(旧セコイア・チャイナ)やゴールドマン・サックスも参加した。
LegalOnは、契約書や裁判書類など、紙ベースの業務が依然として多くを占める法律業界をAIで変革しようとするスタートアップのひとつだ。例えばその他にはサンフランシスコ拠点のHarvey AIがある。Harvey AIは昨年、シリーズCラウンドにおいて、グーグル・ベンチャーズ、OpenAI、クライナー・パーキンス、セコイア・キャピタルなどから1億ドル(約148億円。1ドル=148円換算)を調達し、ユニコーン企業となった。



