北米

2025.07.29 13:00

北朝鮮IT技術者の「不正就労」に関与の米国人に有罪判決、300社以上が標的

Ruma Aktar / Getty Images

ウクライナ在住の共謀犯

また昨年、ウクライナのキーウ在住のオレクサンドル・ディデンコが、別のスキームのために、米国のIT求人プラットフォームや米国の送金サービスで偽アカウントを作成したとして起訴された。

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この事件の刑事告発状によれば、ディデンコはリモートIT労働者向けサービスを提供すると謳う「upworksell.com」と呼ばれるサイトを運営していた。FBIによるサイトの閲覧記録を添えた宣誓供述書によると、同サイトは、リモートIT労働者が他人名義のアカウントを購入・レンタルできると宣伝していた。

また、EUおよび米国での「クレジットカードのレンタル」や、携帯電話用SIMカードのレンタルも宣伝していた。顧客がカードに入金すると、ディデンコは手数料を差し引いたうえでカード情報を提供していた(「upworksell.com」のドメインは、裁判所命令により米司法省が押収し、当初はすべてのトラフィックがFBIに転送される仕組みとなっていた。このURLは現在、売りに出されている)。

供述書によれば、ディデンコは偽装に用いる身元情報約871件を管理しており、米国のフリーランス向けIT採用プラットフォーム3社と、米国拠点の送金サービス業者3社に対してこれらの情報を提供していた。共謀者と協力し、米国内で少なくとも3カ所のラップトップ・ファームも運営していたとされ、これらの拠点ではピーク時に約79台のコンピューターが稼働していたという。検察は、ディデンコが北朝鮮のIT労働者を支援していることを認識していたことが、彼のメッセージの記述で示唆されていると主張している。

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さらに2023年11月には、米国のサイバーセキュリティ企業が、オンラインストレージ上で北朝鮮のIT労働者によるリモート雇用獲得の試みに関連する文書を発見した。

裁判資料によると、このサイバーセキュリティ会社は、これらの文書が「高い確度で」北朝鮮に関係するスパイ活動グループに関連するものだと評価した。この文書には、雇用獲得のためのガイドやヒント、カバーレターの書き方、履歴書の作成法、IT労働者とされる人物のサンプル履歴書、面接用スクリプトなどが含まれていた。

北朝鮮のIT労働者が実際に就職した求人広告に関連する文書も多数見つかっており、それら雇用主は、ビジネス記録からチャップマンの自宅にあったコンピューターと結びつけられた米国企業だったという(検察は、ディデンコとチャップマンの活動が連携していたと主張している)。

検察によれば、ディデンコの顧客の1人である海外IT労働者が、ディデンコのラップトップ・ファームからチャップマンのファームにデバイスを送るよう依頼していたという。このことは、北朝鮮の海外IT労働者ネットワークのために、この2つの拠点が連携していたことを示している。ディデンコが関与したとされるラップトップ・ファームに関連して、南カリフォルニア、テネシー州東部、バージニア州東部の4つの住居に対する捜索令状が発行された。

ポーランド当局は2024年5月6日、米国の要請を受けてディデンコを逮捕した。その後、米国に身柄を引き渡された彼は、12月に米国で逮捕され、その翌月に無罪を主張した。ディデンコの弁護人であるクリストファー・マイケル・デイビスは9月に予定されている審理に向けてコメントを控えている(裁判資料によれば、ディデンコは英語を話さず読めないため、答弁協議書の翻訳にはウクライナ語の通訳が必要という。現在、担当通訳は8月中旬まで国外に滞在中とされている)。

情報提供者に7億円の報奨金

米国務省は昨年、チャップマンの共謀者に関する情報提供者に対して、最大500万ドル(約7.4億円)の報奨金を提供すると発表した。司法省も、事件に関与したとされるジホ・ハン、ハオラン・シュー、チュンジ・ジン、ジョンファ、その他の関係者や関係組織、彼らの収益活動および資金洗浄活動に関する情報を持つ人に対し、「リワーズ・フォー・ジャスティス(正義への報酬)」事務所に連絡をとるよう呼びかけている。この報奨金は現在も継続されている。

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編集=上田裕資

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