北米

2025.07.29 13:00

北朝鮮IT技術者の「不正就労」に関与の米国人に有罪判決、300社以上が標的

Ruma Aktar / Getty Images

クリスティーナ・チャップマンと北朝鮮のIT労働者の動き

チャップマンは、共謀者3名とともに、アリゾナ州リッチフィールドパークで逮捕された。彼女はまず、IT労働者が盗んだ身分情報を使って米国市民になりすますための手助けをした罪で告発された。これらの労働者たちは、フォーチュン500に名を連ねる企業群を含む米国企業に就業していた。例えば、最大手のテレビネットワーク、シリコンバレーのテック企業、航空宇宙メーカー、自動車メーカー、高級小売業者、さらには「世界でも最も認知度の高いメディア・エンタメ企業の1つ」などだ。

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検察によれば、彼らはさらに、多国籍レストランチェーン、米国の衣料ブランドを含む少なくとも2社から不正にデータを持ち出した(労働者たちは、別途3回にわたって米国政府機関2カ所で職を得てデータにアクセスしようとしたが、それら試みはほぼ失敗していた)。

ノートパソコンやその他のデバイスを米国外に送付

連邦捜査局(FBI)はまた、海外にいる北朝鮮IT労働者が米国内にいるように見せかける、米国内の拠点「ラップトップ・ファーム」に対する捜索令状を執行した。

チャップマンは、米国企業から支給されたノートパソコンやその他のデバイス49台を米国外に送っていたが、そのうちのいくつかは北朝鮮との国境付近の中国の都市に発送されていた。2023年10月の捜索令状の執行時には、チャップマンの自宅から90台を超えるノートパソコンが押収された。検察によれば、これらのデバイスには米国の企業名および関連する身分情報を記したメモが添えられていた。

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検察は、チャップマンが米国企業から送られた給与小切手を受け取って偽造したほか、海外のIT労働者に支払われた報酬を自身の米国内のアカウントで受け取っていたと主張している。彼女はその後、これらの不正に得た資金を海外の各個人に送金していたという。

このスキームによって得られた所得の多くは、実在する米国市民の名義を装ってIRSおよび社会保障局(SSA)に報告されていた。この報告では盗まれたり借用されたりした名義が使用されていた。

国家全体の安全保障を危険にさらす行為

「盗まれた米国市民の身元情報を使用すること自体が犯罪だが、その身元情報を使って、北朝鮮とつながりのある外国人に米国企業数百社での雇用を斡旋する行為は、国家全体の安全保障を危険にさらす行為だ」と、チャップマンの逮捕後にIRS-CI(内国歳入庁捜査部)のガイ・フィッコ長官は述べた。「IRSの刑事捜査官たちは100年以上にわたり資金の流れを追ってきたが、今回もその金融に関する専門知識によって、犯罪者の動きを再び封じることに成功した」。

LinkedInを通じてチャップマンをスカウト

検察によれば、チャップマンは当初、LinkedInを通じてこの詐欺に関与するようスカウトされ、「ある企業の米国側の代表」となるよう依頼されたという(彼女のLinkedInのページはすでに削除された模様)。彼女は、米国に対する詐欺共謀、電信詐欺共謀、銀行詐欺共謀、加重的身分盗用、身分詐欺共謀、資金洗浄共謀、無許可での送金業の運営、不法就労支援の罪で起訴された。また、彼女とともに起訴された身元不明の共犯者も資金洗浄共謀の罪に問われている。

チャップマンは有罪答弁の前に、加重的身分盗用の罪による最低2年の実刑を含む、最長で97年半の禁錮刑に直面していた。

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編集=上田裕資

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