ドイツは2024年4月、嗜好(しこう)用の大麻を合法化し、欧州大陸最大の合法大麻市場を擁するようになった。現在、医療用または嗜好用を問わず、何らかの形で大麻が合法化されている欧州諸国は28カ国に上る。
大麻業界の市場調査を手がける英プロヒビション・パートナーズの報告によると、欧州では今年の大麻の売上高が12億ドル(約1780億円)程度になると見込まれている。2028年には26億ドル(約3860億円)、向こう10年以内には60億ドル(約8910億円)に達すると予測されており、今年と比較すると400%以上の急拡大となる。
欧州連合(EU)最大の経済大国であるドイツでは、昨年の大麻の売上高が約5億ドル(約743億円)に達し、今年は10億ドル(約1490億円)弱程度になるとみられている。2020年にEUから離脱した英国には現在、年間売上高が約2億5500万ドル(約379億円)規模の合法的な医療用大麻市場がある。
40の州で医療用大麻が合法化され、24の州で嗜好用大麻の使用が認められている米国では、昨年の合法的な大麻の売上高が320億ドル(約4兆7500億円)に上った。一方、欧州全体の大麻市場は米ニュージャージー州の大麻市場と同規模で、比較的小さい。しかし、スペインとポルトガルで大麻が栽培され、他国への合法的な輸出を可能にする合理的な規制があることは、急成長する欧州の大麻産業に投資する企業にとっては確固たる経済的根拠となる。
欧州諸国の大麻合法化の展開について、大麻業界を専門とする米市場調査会社ウィットニー・エコノミクスの創業者ボー・ウィットニーは、成長は緩やかだが、政策は現実的で常識的だと評価した。
では、欧州諸国の大麻規制の状況について見ていこう。
嗜好用大麻が合法化されている国
欧州で嗜好用大麻を合法化しているのは3カ国のみだが、米国の嗜好用大麻市場とは異なっている。欧州では嗜好用大麻が薬局で販売されているわけではなく、会員が大麻を入手できる非営利のクラブが設けられている。
マルタ
マルタは2021年、個人使用向けの大麻を合法化したEUで最初の国となった。同国の法律では、大麻の所持と栽培が認められている。嗜好用大麻を合法化した米国の州のような商業市場はないが、マルタでは市民が最大4株まで大麻を栽培することができ、非営利の協同組合から大麻製品を購入することもできる。
ルクセンブルク
ルクセンブルクは2023年、嗜好用大麻を合法化したが、依然として販売は禁止されている。厳格な規制の下、各世帯で栽培が許可されている大麻の数は4株までで、18歳以上の成人の個人消費は合法とされる。医療用大麻に関しては、2018年に合法化された。
ドイツ
ドイツは2024年に嗜好用大麻の合法化に踏み切った。これにより、大麻の所持は50グラムまで、自宅栽培は3株まで認められるようになった。マルタと同様、ドイツも大麻を販売する商業店舗の運営は合法化しておらず、会員が大麻を入手できる非営利の大麻社交クラブを設けている。ドイツにも医療用大麻市場があり、医師が患者に大麻を処方することが認められている。



