経済

2025.07.28 11:30

次の債務危機で勝者と敗者は誰になるか 起こりつつある「地殻変動」

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唯一の救いは、新興国の債務水準が先進国よりは低いことである。ただし、新興国では債務の持続可能性の閾値がはるかに低い(市場が浅く、税収確保も難しい)点には留意しておく必要がある。より興味深いのは、新興国のなかには、債務水準を比較的低く抑えている大規模な経済国がそこそこの数存在するという点だ。たとえばインドネシアやメキシコといった国だ。

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注目すべき3つ目の動向は、企業の創出に加え、株式相場や不動産相場の上昇によって巨大な富が生み出されていることだ。スイスの金融大手UBSの「グローバル・ウェルス・リポート」2025年版によると、驚嘆すべきことに個人の富は世界全体で471兆ドル(約6京9600兆円)に達し、その約35%が米国に集中している。米国の成人の平均資産額は62万ドル(約9200万円)にのぼる。米国は、純資産5000万ドル(約74億円)超の超富裕層のおよそ60%が居住する国でもある。これを上回る層として純資産10億〜500億ドル(約1480億〜7兆3900億円)の個人も世界で3000人近く存在する(その合計資産額は13兆ドル=約1920兆円=近くにのぼる)。

世界の債務や富をめぐる現状を大まかに説明した理由は、向こう5年かその先に、「健全」なバランスシートを持つ者と債務に縛られた者との間で、権力や影響力、そして富の地殻変動的な移転が起こる可能性があるからだ。まさに、ディケンズやバルザックが見事な筆致で描いたように。

いくつか具体的を挙げよう。英政府は財政制約が強いことで知られ、野心的な「AI(人工知能)機会行動計画」のための資金も単独では賄いきれない。そのため、この事業では政府系ファンド(SWF)型の投資ファンドと提携する公算が大きい(ちなみにカナダのケベック州貯蓄投資公庫はこのほど、英サフォーク州の原子力発電所に最大17億ポンド=約3400億円=を投資すると発表した)。

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同様のことは米国についても言える。米銀大手モルガン・スタンレーは最近のリサーチノートで、2028年までに世界全体でAIインフラ(新たな電力源やデータセンター)への投資が3兆ドル(約440兆円)近く必要になると試算したうえで、半分ほどは米国の大手テクノロジー企業から拠出されると見込んでいる。米国の財政制約という文脈では、潤沢な現金を持つテック企業がさらに強力になり、国家にとって不可欠になるだろう。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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