サイエンス

2025.07.27 16:00

死海の研究で解き明かす、塩の巨大堆積物の形成メカニズム

死海の湖岸線と砂浜。過去数十年にわたって急速な湖水面の低下(1m/年)が進行している過程が見られる(Figure 1(b), Eckart Meiburg and Nadav G. Lensky, Annual Review of Fluid Mechanics Volume 57, 2025)

死海の湖岸線と砂浜。過去数十年にわたって急速な湖水面の低下(1m/年)が進行している過程が見られる(Figure 1(b), Eckart Meiburg and Nadav G. Lensky, Annual Review of Fluid Mechanics Volume 57, 2025)

地中海の、特に南イタリアとシチリア島の崖に沿って散策していると、すべてが塩と石膏の厚い層からなる露頭を見かけることがあるかもしれない。

米国の深海掘削船グローマー・チャレンジャー号の調査航海で実施された地球物理学的調査と広範囲に及ぶ掘削活動のおかげで、この岩塩層は地中海の下に広がっており、一部の海域では厚さが最大2.5kmに達することがわかっている。こうした堆積層は大量の海水が蒸発することによってしか形成されない。科学者は200年近く、なぜそのようなことが可能になったかについて知りたいと考えてきた。そして、イスラエルにある比類のない塩湖の死海がその答えを教えてくれる可能性がある。

シチリア島にある厚い塩の堆積層の露頭(D.Bressan)
シチリア島にある厚い塩の堆積層の露頭(D.Bressan)

今回の研究をまとめた最新論文の筆頭執筆者で、米カリフォルニア大学サンタバーバラ校の教授(機械工学)を務めるエッカート・メイバーグは「この地殻内の大規模な堆積層は、水平方向に何kmにも広がり、垂直方向の厚みが1km以上に及ぶことがある」として「大規模な堆積層はどのようにして生成されたのだろうか。死海は今日そのメカニズムを研究できる世界で唯一の場所なのだ」と述べている。

死海は塩分濃度が非常に高いため、水域では生物がほとんど生息できないことから、この名がつけられた。

実際、世界には塩分濃度が高い水域が他にもあるが、巨大な塩の堆積物が形成されるのは死海だけだ。これにより、塩の堆積層の進化、特に堆積層の厚みの時空間的な変動の背後にある物理過程の研究に取り組むことができるわけだ。

メイバーグと論文共同執筆者でイスラエル地質調査所のナダブ・レンスキーのチームは今回の研究で、現在の死海で支配的となっている流体力学と関連する堆積物輸送プロセスを取り上げている。

研究チームは2019年、夏季の死海で発生しているかなり特異なプロセスを観測した。蒸発によって死海の表層水の塩分濃度が上昇する一方、それでもなお死海に流れ込む塩が水温の上昇によって溶解し続けていたのだ。

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翻訳=河原稔

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