ロシアは戦場で直面する課題の多くについて技術による解決を図ってきたが、渡河をめぐる課題には単純明快な技術的解決策が存在しない。ロボットの橋やボートを活用したところで、兵士がさらされるリスクの多くは変わらない。渡河作戦に成功する唯一の堅実な方法は、迅速かつ強力に行動することである。兵士たちを素早く渡河させ、続けて攻撃を行い、対岸の主要な目標を確保する。そのためには、敵の火力にさらされるなかで複雑な機動を遂行できる、練度が高く結束した部隊が必要になる。
だが戦争の現在の段階では、ロシア軍の部隊はこうした作戦を遂行するのに必要な集団訓練を概して欠いている。人員の損耗率が高いため、ロシア軍は補充兵に大きく依存しており、こうした兵士の多くは最低限の訓練しか受けていない。新たに補充された兵士は一般に経験が足りず、配属先の部隊との訓練の機会もほとんど与えられないため、渡河のような協調作戦を遂行するのはきわめて困難になっている。
現状の人員不足や攻勢維持への意欲を考えると、ロシア軍には部隊をいったん後方に下げて集団訓練を施すような余裕はない。こうした訓練不足の問題は戦線全体で顕著であり、ロシア軍の攻撃の多くはもはや大規模な協調作戦の一部ではなく、小規模な部隊レベルで行われている。
戦争が続くにつれて、ロシア軍にとって渡河作戦はさらに難易度が高くなっていくだろう。ウクライナ軍では監視ドローンや攻撃ドローンが増え続けており、ロシア軍が渡河のために兵力を集中させている地点を探知し、そこに砲弾や徘徊弾薬を誘導するのに非常に重要な役割を果たしている。最近のドローンには、渡河地点を隠す煙幕などの遮蔽物を透過して見通すことができるセンサーを搭載しているものもある。ウクライナ軍はさらに、河川の哨戒やロシア軍の行動監視のために無人水上艇(USV)の配備も進めている。
ロシア・ウクライナ戦争は新しい技術の迅速な導入と関連づけられることが多いが、渡河のような古典的課題が依然として戦場を形づくっている面もある。ロシア軍はこれまで何度も渡河作戦に失敗し、甚大な損害を出してきた。この課題はロシア軍が今夏の攻勢で成功を収めるうえでも大きな障害になっている。


