ハルキウ州の防衛線オスキル川
ウクライナ北東部のハルキウ州では、シベルシキー・ドネツ川の支流であるオスキル川がウクライナ軍にとってきわめて重要な防衛線になっている。とりわけ、クプヤンシクやその周辺の兵站ルートの防衛で重要な役割を果たしている。ロシア軍側からすれば、オスキル川の西岸に渡ると、重要な道路網を利用できるようになるとともに、クプヤンシクに対して北側と東側からの作戦が可能になる。裏を返せば、ロシア軍がこの方面で前進を続けるには、この河川線を確保することが不可欠になっている。
ロシア軍によるオスキル川渡河の試みは2024年12月下旬に始まった。ロシア軍はまず、クプヤンシク北方の集落であるドボリーチナ、ノボムリンシク、トポリ付近で攻撃を仕掛けたが、いずれも撃退された。2025年3月、ロシア軍は新たな戦術を導入し、ドローンを使ってウクライナ軍の陣地特定や、歩兵の渡河を支援する火力調整を行うようになった。しかし、この適応の甲斐もなく、作戦はウクライナ側の対ドローンシステムによる妨害や、渡河部隊と砲兵支援の連携不足により失敗に終わった。
夏季攻勢の一環でロシア軍はオスキル川西岸でも作戦行動を強化しており、主にクプヤンシクとドボリーチナの間に位置する地域に注力している。6月中旬には、クラスネ・ペルシェ付近でロシア軍が橋頭堡を確保したことが、撮影地点を特定できる映像で確認された。しかし、この橋頭堡を利用して重装備を渡河させることはできなかった。さらにロシア軍は7月中旬、オスキル川を渡るため浮橋(ポンツーンブリッジ)を架けようとしてやはり失敗している。
ロシア軍は一部の兵士を渡河させることには成功しているものの、装甲部隊を送り込めていないために攻撃能力が大きく制限され、北東部で作戦上の突破口を開くには至っていない。
古典的課題と新たな技術
橋であれゴムボートであれ、川を渡る強襲は軍事作戦のなかで最も困難な部類に入る。兵士たちは遮蔽物の少ない開けた地形を進まなくてはならず、多くの場合、動きが制限され防護も乏しいプラットフォーム上の行動を強いられる。渡河地点はボトルネックとなり、多くの兵士がそこに集まるため攻撃にさらされやすく、敵の火力にも対応しにくい。対岸にたどり着けても、最初は少人数で橋頭堡を確保する必要があり、そこでは往々にして火力で優位にあり、より高所に陣地を築き、防御を固めている敵側と対峙することになる。


