ファッション

2025.07.29 11:00

ラグジュアリーブランドは「憧れる消費者」より「高級であることの本質」を優先すべき

縮小が見られる高級ブランド市場でも好調を維持するエルメスのハンドバッグ「バーキンオフィサー」(photo-lime / Shutterstock.com)

2. 混雑し標準化された小売体験

高級品消費者の80%という大多数が、混雑した小売店での事務的な販売環境に疎外感を抱いており、プライバシーが守られた落ち着ける環境の中、人間的なサービスを提供する特権的な専門の販売空間でブランドと相互交流することを好んでいる。大規模に顧客に親密なサービスを提供することは(不可能ではないとしても)難しい。しかし、これこそがブランドにとって最も重要な顧客が期待していることなのだ。

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3. 品質の低下と顕著な欠陥

高級品で最も評価されているのは職人の技と品質の高さだが、高級品消費者の89%はそのようなものが感じられないと答えている。このような製品の美点は、業界の工業化が進み、最高の品質や価値の追求よりも大量生産を重視するようになった影響で損なわれている。

4. 最上位の顧客に対する認識不足

最上位の顧客は、ブランドと相互に関わり合い、ブランドが自分たちを重要な顧客であると認識し待遇してくれることを期待している。しかし、顧客の約70%は、分野や地域を問わず、適切な待遇を受けていないと感じている。

その原因の多くは、ブランドの顧客管理システムと、顧客セグメンテーション(顧客を類似した特性や傾向によってグループ化する)およびターゲティング(そこから特定の顧客グループを選び出してマーケティングする)の方法にある。ブランドはもっと上手にデータの分析を行い、セグメンテーションによるグループ化を洗練させ、重要な顧客を適切に認識・待遇できるようにする必要がある。

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最上位顧客との結びつきを再構築する

高級ブランドが進むべき道は、「高級」の第一原理に立ち返ることだ。残念ながら、多くのブランドは「憧れを持つ消費者」に支えられた成長を追求する過程で、ブランドの本質的価値から逸れていってしまった。

「今後数年の間に勝利する高級ブランドは、本物の高級とは何かを明確に定義している顧客に卓越性を提供するために、戦略を核心に集中させる勇気を持ったブランドになるだろう」と、ビアンキは述べている。

高級ブランドは、高級品を常に卓越したものにするという本質に立ち返らなければならない。それはつまり、個人的な関係を築き、顧客を適切に認識する特別な顧客体験と究極的な品質を提供することだ。

ビアンキは次のように結論づけている。「最上位の顧客を獲得して維持するために、ブランドは自らを再校正する必要がある。大量生産ではなく精緻な品質を通じて、どこでも手に入れられる遍在性ではなく顧客との親密な関係を通じて。それによって、ブランドは安定したラグジュアリー産業を構築するための重要な一歩を踏み出せるだろう。それは、そもそも高級品はなぜ特別なのか、という当初の原則に回帰することだ」

forbes.com 原文

翻訳=日下部博一

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