分極化した決算
高級ブランドの業績はますます分極化が進み、好調なブランドに対し遅れを取るブランドが増えている。この格差はさらに広がる見込みであり、高級品市場は今年末までに5%減少するとBainは予測している。
にもかかわらず、高級ブランドの多くは、2024年には市場の売上の約60%を生み出したものの現在は弱体化しつつある「憧れを持つ消費者」層へのマーケティングに依存を続けている。このことは概して、高級品消費者のピラミッドの頂点に位置する最も力を持つ消費者を疎外するという代償を伴う。
BCGによると、このような最上位の消費者は、年間5000ユーロ以上を高級品の購入に費やし、高級品市場の売上高の40%を占めている。さらに、その中で年間5万ユーロ(約870万円)以上を支出する最頂部の顧客による売上高は、その半分を超える市場の23%を占める。
「これから数年の間に成功するためには、ブランドは最上位の顧客に再び焦点を合わせ、真の高級が本当に意味するものは何かという基本に立ち返らなければならない」とビアンキは助言する。
高級の原則に忠実なブランドは報われており、例えばブルネロクチネリは2024年通期の売上高を12%増で終えた。同様に、プラダ(+13%)、エルメス(+9%)、リシュモン(+8%)も直近の四半期決算で好調な数字を残している。
高級ブランドが最上位層の顧客の期待を裏切っている原因
BCGは、世界中の高級品消費者7000人を対象とした調査と最上位層顧客の定性的研究に基づき、ブランドが極めて重要な顧客の期待とニーズに応えられていない4つの主要な原因を特定した。
1. 過剰なマーケティングとパーソナライゼーション(個人向けに最適化すること)の不足
高級品消費者の約60%が過剰なマーケティングと総花的なマスコミュニケーションにうんざりしている。マーケティングを通じて注目を集めようとするブランドの努力は、間違った種類の注目を集めており、重要な顧客に嫌気を起こさせ、興味を失わせる原因となっている。
「そのような顧客が価値を置くのはアウトリーチ(ブランドから積極的に働きかけてくること)ではなく、個人に適合した、つまり個人の状況・嗜好・ライフスタイルに合わせて構築されたインタラクション(相互交流)だ」とBDGは助言している。求められているのは、もっと人と人が直接向き合う顧客対応であり、AIを補助的に使用することはできても、AIは個人的なつながりの代替にはならない。


