ライフスタイル

2025.08.03 15:00

地域貢献と社長の決意、鎌倉彫が示す道:The Gift(小澤克人 東京建物社長)

贈り、贈られたモノや体験は、人生を変えるほどの力を持つことがある。企業のトップ、リーダーたちが経験した、モノや体験に介在する特別な思い入れを紹介する。自身の生き方、サクセスストーリーにも影響を及ぼしたであろう「GIFT」の逸話には人間味あふれる姿がある。希薄化も言われる現代の人間関係とは異なる、特別な関係だ。


THE GIFT #26

小澤克人

東京建物 代表取締役社長

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

唯一無二の手づくりの鎌倉彫。陰影の美しい丁寧な彫りから、

叔父の思いの強さが伝わってくるようだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

唯一無二の手づくりの鎌倉彫。陰影の美しい丁寧な彫りから、叔父の思いの強さが伝わってくるようだ。

私の母方の祖父・黒田長蔵は、かつて日本橋で洋食店を営んでいた。その後、戦渦に巻き込まれ一家は鎌倉に移住。そこで生まれ育った私が、現在、八重洲・日本橋・京橋の通称「YNK」エリアの飲食店の方々と新たなまちづくりに取り組んでいることに運命的な縁を感じている。実は、祖父が日本橋料理飲食業組合の8代目組合長を務めていたと知ったのも、このエリアにかかわってからのことだった。

そんななか、今年の社長就任時に黒田家の叔父から送られてきたのが、彼が趣味としている鎌倉彫のお盆と湯飲みだ。料理人の祖父とは対照的に、社会科の教諭で高校の校長も務めた叔父。同封の絵葉書には、盆に彫られているのは仏身の光背である旨が書かれていた。きっと、新しい役割においても世に光明と繁栄をもたらす存在であれと、この贈り物を通して激励してくれたのだろう。

叔父の丹念な彫りに触れると、自分のルーツとYNKエリアとの縁の深さを感じる。手に取るたび、まちの人たちの思いや歴史を継承しながら地域の発展に貢献することが自分の使命であると、決意を新たにするのだ。


おざわ・かつひと◎1987年、慶應義塾大学法学部卒業後、東京建物に入社。2007年にRM事業部長、15年に執行役員企画部長、21年に取締役専務執行役員を経て、25年1月より現職。東京の文化と商業を象徴するYNKと称される八重洲・日本橋・京橋エリアなどで、地域の一員としてまちづくりに取り組んでいる。

文=伊藤美玲 イラスト=東海林巨樹

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事