起業家

2025.08.01 13:30

アフリカ小規模農家所得3倍へ。Degasと池森VCの挑戦

山岸朝典|池森ベンチャーサポート(写真左)牧浦土雅|Degas(同右)

山岸朝典|池森ベンチャーサポート(写真左)牧浦土雅|Degas(同右)

牧浦土雅は2018年、アフリカの貧困問題の解決を目指して、ガーナでDegasを創業した。現金での融資を受けにくい小規模農家を対象に、農業資材の現物融資と営農指導を行い、収穫物で返済してもらうファイナンス事業を展開。生産性と所得の向上を支援している。農家や農地のデータを独自の機械学習アルゴリズムで解析して与信判断しており、回収率は95%を実現。これまで累計6.5万軒以上の農家に融資してきた。

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池森ベンチャーサポートは、22年土雅さんにはあった。土雅さんは時にハラハラする大胆な発言をしますが、実はすごく礼儀正しいんです。地に足を着けて、泥くさいことを惜しまずやっている。3月からDegasに出資し、支援している。同社事業統括責任者の山岸朝典が投資した理由とは。


山岸:当社は、ファンケル創業者の池森賢二が、若手の起業家を応援したいという思いから私財で立ち上げたベンチャー投資会社。一般的なVCと違い、LP(Limited-Partner)も償還期限もないのが特徴です。持続的に投資領域や投資額を増やしていくために一定の利益は追求しますが、それだけを目的としていません。そのビジネスが社会実装されたら世の中がもっと面白くなるか、人々の生活がより豊かになるかという視点で投資しています。21年末に土雅さんと初めてお会いしたときの印象は、まさにそれでした。現地に土着して、貸付した農家さんの結婚式に呼ばれるなど、コミュニティに深く入り込んでいて、すごいなと。

牧浦:満期がない中長期目線での投資ということで、池森ベンチャーサポートは僕らと非常に相性が良いと思いました。山岸さんは元々公認会計士で、細かい財務の部分でも高い解像度でデューデリジェンス(DD)してくれてありがたかったです。

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山岸:ガーナの農家は一般的に6月に種まきをして、12月に収穫するので、受け取った農作物をDegasが食品会社などに販売するのは翌年になるんです。一方で、ガーナの決算期は12月。Degasは種まきの6月より前に種子や肥料などの資材を調達するわけですから、実際の売り上げが立つのは翌期になる。単年度の売り上げは、コストに対して小さく見えるのですが、1期ずらして本当の事業性を評価してみると、実は利率はすごく高かった。1軒あたりの貸付面積を増やしていけば、スケールメリットも出てくると思いました。

牧浦:ただ、当時はコロナ禍ということもあり、ほかの投資家からの調達には苦戦したんです。21年の貸付数が3000軒で、22年は3万軒に増やすために10億円を集める計画でした。それが6月の種まきに間に合わせることが厳しくなって。そこで、山岸さんに相談したら、結果的に単独で5億円を出してくれることになり、正直、度肝を抜かれましたよ。

山岸:日本で農協がやってきた仕組みを海外に輸出するモデルという点で、日本人としても誇らしいし、小規模農家の生活が実際に良くなっていくことにワクワクしたんです。ただ、3000軒から3万軒増やすとなると、オペレーションをつくり上げないとうまく回らない。だから、まずはその仕組みをつくって実証しようということで、計画値の半分の貸付数1.5万軒にするのに必要な金額を出させてもらいました。当社で過去最大の投資額でしたが、出資したいと思わせるだけの人間力が土雅さんにはあった。土雅さんは時にハラハラする大胆な発言をしますが、実はすごく礼儀正しいんです。地に足を着けて、泥くさいことを惜しまずやっている。

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文=眞鍋 武 写真=平岩 享

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私がこの起業家に投資した理由

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