F1と地続きの場所に立つ──XX Programという到達点
もうひとつ、現代のフェラーリが築いてきた特異な価値として、見逃せないのが「XX Program」の存在だ。
これは一般のレースとは異なり、フェラーリが特定のオーナーに提供する、サーキット専用モデルと独自の走行プログラムである。F1直系のテクノロジーを注ぎ込んだ専用車「FXX-K」や「SF90 XX」などを用い、フェラーリのワークスチームと同じデータ解析やメカニックサポートを受けながら、世界各地のサーキットを走るもの。
いわばこれは、クルマの所有を超えた“関与”のかたちだ。購入後もアップデートされ、走行データは本社マラネロと共有される。オーナーはマシンの性能とともに、自分自身のドライビングスキルも進化させていく。資本だけでは手が届かない、長期的な関係と信頼が前提となる世界。その片鱗が、今回の富士でも披露された。
XX Programに参加するということは、フェラーリのレーシングカルチャーを「観る側」ではなく、「担う側」として生きることでもある。そこに集う人々の背中には、確かにブランドと人生が交差する何かが宿っていた。
理屈ではない、“情熱と興奮”という共通言語
フェラーリがなぜ特別なブランドであり続けるのか。その答えは、ただ高性能な車をつくることではなく、レースという原点を忘れずに、走りへの情熱を多くの人々と共有しようとする姿勢にある。
そのためにフェラーリは、手間も時間も、そして相応のコストも惜しまず、こうしたイベントを10年にわたって続けてきた。その結果として実現したのが、富士で目にしたあの日の光景だ。
サーキットを走るフェラーリは、美しい。


