2025.07.31 14:15

なぜフェラーリは特別なのか? 富士スピードウェイで体感した“情熱と興奮”の答え

展示と走行の間にある“文化”の感触

展示エリアでは、V12の新モデル「12Cilindri」や最新スペチアーレ「296 Speciale」も、手に触れられるほどの距離で紹介されていた。

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発表されたばかりのスペチアーレ「296 Speciale」をはじめ、フェラーリの最新車種がずらりと展示されていた。
発表されたばかりのスペチアーレ「296 Speciale」をはじめ、フェラーリの最新車種がずらりと展示されていた。
V6 PHEVモデル「296 GTB」のスペチアーレとして開発された296 Speciale。最高出力約880ps、乾燥重量を60kg削減し、空力性能を徹底的に最適化。軽快さと精密さを極めた“操る喜び”に特化した1台。
V6 PHEVモデル「296 GTB」のスペチアーレとして開発された296 Speciale。最高出力約880ps、乾燥重量を60kg削減し、空力性能を徹底的に最適化。軽快さと精密さを極めた“操る喜び”に特化した1台。
フェラーリ伝統のV12自然吸気を継ぐ最新モデル「12Cilindri」のSpider仕様。6.5L V12が830psを発揮し、9500rpmまで吹け上がる快感をオープントップで体感できる。走る芸術の、新たなかたち。
フェラーリ伝統のV12自然吸気を継ぐ最新モデル「12Cilindri」のSpider仕様。6.5L V12が830psを発揮し、9500rpmまで吹け上がる快感をオープントップで体感できる。走る芸術の、新たなかたち。

同時に展示されている、数々のクラシックカーたちも際立った存在感を放つ。この日展示されていた「250 GTO」や「Daytona SP3」をはじめ、フェラーリの歴代モデルの多くは、「Ferrari Classiche(フェラーリ・クラシケ)」という本社の公式プログラムによって“クラシック認定”を受けている。

この制度は、製造から20年以上が経過したフェラーリに対し、オリジナルの図面や構成部品に基づく厳密な審査を行い、本社が正統性を保証するというもの。審査に通過した車両には「レッドブック」と呼ばれる認定書が与えられ、正規のヒストリックモデルとして扱われる。

1950年代初頭のグランドツアラー「212 Inter」。クラシケ認定を受けたこの個体は、当時のフェラーリのラグジュアリーとレーシングの両面を象徴するモデル。イタリアのカロッツェリア文化とともに育まれた、端正なフォルムが際立つ。速度計の目盛りは240km/hまで。クロノグラフ、インジケーター、プッシュスイッチ。クラシック・フェラーリのコクピットには、情報ではなく「体験」を読み取らせるための設計思想がある。
1950年代初頭のグランドツアラー「212 Inter」。クラシケ認定を受けたこの個体は、当時のフェラーリのラグジュアリーとレーシングの両面を象徴するモデル。イタリアのカロッツェリア文化とともに育まれた、端正なフォルムが際立つ。速度計の目盛りは240km/hまで。クロノグラフ、インジケーター、プッシュスイッチ。クラシック・フェラーリのコクピットには、情報ではなく「体験」を読み取らせるための設計思想がある。

興味深いのは、こうした保全作業をフェラーリ自身がブランドの責任として担っているという点だ。クラシックモデルを単なる過去の遺産ではなく、今も走らせ、守るべき“現役”と位置づける姿勢には、フェラーリという企業の誇りと戦略性が表れている。

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この制度があるからこそ、オーナーは自らの所有する車両に“価値が保証されている”という安心感を持つことができる。単なるノスタルジーではなく、時間を超えてフェラーリを維持することの意味が、ここにはある。

フェラーリがつなぐ、思いがけないネットワーク

個人的に心に残ったのは、駐車場でばったり会った知人の投資家(もちろんフェラーリのオーナーだ)とのやりとりだ。予定していたわけではない。だが、「フェラーリを通じてこの場にいる」という一点で、自然と会話が生まれ、近況や、いま取り組んでいるプロジェクトについて、まるでバーのカウンターでばったりと会ったように情報を交換した。

フェラーリオーナーには企業の経営者層が多い。そのこと自体はよく知られた事実だが、こうしたイベントでしか会わない顔ぶれがあり、そこで交わされる話には、ある種の“体温”がある。社交でも会議でもない、だが無駄ではない。事業家同士のインフォーマルな情報交換の場として、このイベントは思いのほか機能している。

週末を通じては、フェラーリのワンメイクレース「フェラーリ・チャレンジ・トロフェオ・ピレリ・ジャパン」の第3戦が開催されていた。ジェントルマンドライバーと呼ばれるオーナーたちが、本気で順位を争うこのシリーズは、フェラーリがグローバルに展開する“競技としてのフェラーリ”の最前線とも言える。

富士スピードウェイのコーナーに差しかかるフェラーリ・チャレンジのマシンたち。色とりどりのボディに共通しているのは、情熱と勝負への集中だ。
富士スピードウェイのコーナーに差しかかるフェラーリ・チャレンジのマシンたち。色とりどりのボディに共通しているのは、情熱と勝負への集中だ。

一方で、レースとは別枠で行われた「スポーツ・ドライビング」や「ファミリー・ドライビング」といったプログラムでは、オーナーが自らの愛車で富士スピードウェイの本コースを走行できる機会が設けられていた。スポーツ走行枠では、ドライビングスキルを磨くために真剣に走る姿もあれば、助手席に家族を乗せて“記念の一周”を楽しむ姿もある。

なかでも圧巻だったのは、最終日のパレードラン。全国から集まった150台以上のフェラーリが隊列を組み、一斉にサーキットを周回した。SF90、812シリーズ、スペチアーレ系、さらには過去の名車まで、総額100億円を超す、多彩なモデルが富士のコースを埋め尽くす光景は、ただ華やかというだけでなく、オーナーたちの誇りと愛情がにじむような“走る祝祭”だった。

競技と体験、観戦と参加。フェラーリというブランドが持つ多層的な魅力が、この週末には隅々にまで可視化されていた。

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文=青山鼓

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