展示と走行の間にある“文化”の感触
展示エリアでは、V12の新モデル「12Cilindri」や最新スペチアーレ「296 Speciale」も、手に触れられるほどの距離で紹介されていた。
同時に展示されている、数々のクラシックカーたちも際立った存在感を放つ。この日展示されていた「250 GTO」や「Daytona SP3」をはじめ、フェラーリの歴代モデルの多くは、「Ferrari Classiche(フェラーリ・クラシケ)」という本社の公式プログラムによって“クラシック認定”を受けている。
この制度は、製造から20年以上が経過したフェラーリに対し、オリジナルの図面や構成部品に基づく厳密な審査を行い、本社が正統性を保証するというもの。審査に通過した車両には「レッドブック」と呼ばれる認定書が与えられ、正規のヒストリックモデルとして扱われる。

興味深いのは、こうした保全作業をフェラーリ自身がブランドの責任として担っているという点だ。クラシックモデルを単なる過去の遺産ではなく、今も走らせ、守るべき“現役”と位置づける姿勢には、フェラーリという企業の誇りと戦略性が表れている。
この制度があるからこそ、オーナーは自らの所有する車両に“価値が保証されている”という安心感を持つことができる。単なるノスタルジーではなく、時間を超えてフェラーリを維持することの意味が、ここにはある。
フェラーリがつなぐ、思いがけないネットワーク
個人的に心に残ったのは、駐車場でばったり会った知人の投資家(もちろんフェラーリのオーナーだ)とのやりとりだ。予定していたわけではない。だが、「フェラーリを通じてこの場にいる」という一点で、自然と会話が生まれ、近況や、いま取り組んでいるプロジェクトについて、まるでバーのカウンターでばったりと会ったように情報を交換した。
フェラーリオーナーには企業の経営者層が多い。そのこと自体はよく知られた事実だが、こうしたイベントでしか会わない顔ぶれがあり、そこで交わされる話には、ある種の“体温”がある。社交でも会議でもない、だが無駄ではない。事業家同士のインフォーマルな情報交換の場として、このイベントは思いのほか機能している。
週末を通じては、フェラーリのワンメイクレース「フェラーリ・チャレンジ・トロフェオ・ピレリ・ジャパン」の第3戦が開催されていた。ジェントルマンドライバーと呼ばれるオーナーたちが、本気で順位を争うこのシリーズは、フェラーリがグローバルに展開する“競技としてのフェラーリ”の最前線とも言える。
一方で、レースとは別枠で行われた「スポーツ・ドライビング」や「ファミリー・ドライビング」といったプログラムでは、オーナーが自らの愛車で富士スピードウェイの本コースを走行できる機会が設けられていた。スポーツ走行枠では、ドライビングスキルを磨くために真剣に走る姿もあれば、助手席に家族を乗せて“記念の一周”を楽しむ姿もある。
なかでも圧巻だったのは、最終日のパレードラン。全国から集まった150台以上のフェラーリが隊列を組み、一斉にサーキットを周回した。SF90、812シリーズ、スペチアーレ系、さらには過去の名車まで、総額100億円を超す、多彩なモデルが富士のコースを埋め尽くす光景は、ただ華やかというだけでなく、オーナーたちの誇りと愛情がにじむような“走る祝祭”だった。


競技と体験、観戦と参加。フェラーリというブランドが持つ多層的な魅力が、この週末には隅々にまで可視化されていた。


