33歳でライフに出向。入社してわかったのは、トップダウンの負の側面が成長の妨げになっていることだった。例えば当時は清水が残業ゼロを打ち出しており、残業する店舗は事前申告する必要があった。ただ、トップの「申告しろ」は「残業は認めない」と同義。現場はそう忖度したため、品出しが遅れて店舗が荒れたり、サービス残業が続出した。
「店長らに『俺たちは言えない。あんたはいずれ三菱商事に帰るのだから代わりに言ってくれ』と言われましてね。腰かけのつもりはなかったですが、現場の声は理解できたので、清水にいろいろと直言しました」現場の声を上に伝えるだけのメッセンジャーではない。「こうしないとお客様が離れる」と根拠を示しながら訴えた。こうしてボトムアップの力を取り入れながら改革を進めたことで、低利益率に悩んでいた同社は息を吹き返したのだった。
39歳で社長就任後も、現場の声に耳を傾ける姿勢は変わらない。18年に大型台風が関西を襲ったときは、社会的責任を果たそうと全店営業を指示した。しかし、現場から不満が噴出。それを受けて「従業員とお客様の安全を優先」「営業の最終判断は店長に任せる」とルールを変えた。
2023年10月、岩崎は兼任していた営業統括を執行役員に権限委譲した。現場に近いことを権限委譲することで、本人はより大局に立って経営に集中できる。これからライフをどう導くのか。中長期タームでの戦略について最後にこう教えてくれた。
「日本はスーパーが300社以上ですが、同じ島国のイギリスは4社に集約されています。建築費高騰で新規出店が難しくなってきたこともあり、今後は日本も再編が必須。これまで『M&Aは、いいお話があれば』と話してきましたが、こちらから積極的にリサーチする時期に来ています。実際、専任の担当者を新たに置きました」
狙っているのは同業界だけではない。得意のPB開発を視野に入れて「垂直統合でメーカーの領域に入っていくことも検討中」という。
脱トップダウン経営が完成に近づいた今、ライフは次のフェーズに入ろうとしている。岩崎が業界をどのように変えていくのか楽しみだ。
いわさき・たかはる◎東京都出身。1989年に三菱商事に入社。94年同子会社の英企業へ出向。99年ライフコーポレーション創業者清水信次に請われ同社取締役に。2001年専務取締役、06年代表取締役社長COOを経て、19年より現職。


