「動物を元の生態系に再登場させれば、炭素クレジット、自然クレジット、観光税に貢献してくれる可能性があります」
生物多様性クレジットまたは自然クレジットは、自然環境の保護や再生を奨励する仕組みで、炭素クレジットが二酸化炭素排出量削減を図っているのと似ている。コロッサルがこうした新興市場から収入を得たり、取引先の国から観光税の一部を受け取ったりすることもありうるかもしれない。
コロッサルが交渉中の政府のひとつは、絶滅の瀬戸際にある種やオスが多い傾向にある種の保存に集中的に取り組んでいるという。メスが少なく繁殖周期が季節単位であることは、遺伝的多様性とタイミングの両方で問題になる。この政府の取り組みは、25年もの時間と3億5000万ドルのコストが必要になるかもしれないうえ、それだけやってもそれらの種が絶滅する可能性は残るとラムは言う。
一方、コロッサルがメスに遺伝子操作をほどこし、季節ごとでなく年間を通して繁殖を可能にすれば、プロセスを簡略化できる。ただし同時に、倫理面で懸念を引き起こす可能性はあるが。
「我々はサービスの対価として彼らに1億ドルを請求するかもしれませんが、種の保存は保証されます。計画実現は20年早まり、かつ計画よりも数億ドル安く済ませることが可能なのです」(ラム)
生物を絶滅から守ることは重要な課題だ。国際自然保護連合(IUCN)によると、調査対象となったすべての種の28%に当たる4万6300以上の種が絶滅に瀕している。それだけの規模で生物多様性が失われれば生態系全体のバランスが狂ってしまい、地球にとっても有害だ。
ラムとチャーチは共に、1995年によそから連れてきたオオカミが放たれた米イエローストーン国立公園の事例を挙げる。その試みでは、ビーバーのコロニーが戻り、ヤナギが茂り、美しい声でさえずる鳥が大幅に増えたのだ。
「ひとつの種の存在がどれほどの変化をもたらすかを驚くほど明確に示した例だ」(チャーチ)
その種が、重要な環境のバランス維持により大きな役割を果たしているほどその傾向は顕著で、最終的に地球全体のバランス維持につながる。そしてゾウ(ケナガマンモスのような、ゾウの遠い祖先を含む)はまさに「アフリカのサバンナでも、アジアの熱帯雨林でも、彼らが生息したあらゆる環境において重要な種なのだ」とチャーチは話す。
だが、生物多様性を守るためや気候変動を食い止めるために、遺伝子を組み換えた生物を野に放つというアプローチは、議論を呼ぶだろう。
「マンモスを復活させるなんて、自分の会社に投資を呼び込むためのばかげた行為だと思う」
地球科学が専門のアリゾナ大学教授カール・フレッサはそう言う。
「遺伝子を組み換えた生命体を自然環境に解き放つなんて、うまくいくわけがありません。それに、表面上低温に適応した種を、気候変動によって本来の生息地が消えつつあるなかで解き放つことには、倫理面でも問題があるだろう」


