バイオ

2025.07.30 16:30

絶滅したマンモスやオオカミの復活は地球を救い、マネーを生むのか

コロッサル・バイオサイエンシズ共同創業者兼CEOのベン・ラム(Mat Hayward / WireImage / Getty Images)

コロッサル・バイオサイエンシズ共同創業者兼CEOのベン・ラム(Mat Hayward / WireImage / Getty Images)

数千年前に絶滅したケナガマンモスをはじめ、失われた種を復活させようとの試みに、総額4億3,500万ドルもの資金が集まっている。壮大な夢はビジネスたりうるのか。


シリアル・アントレプレナーのベン・ラム(43)とハーバード大学の遺伝学者ジョージ・チャーチ(70)は、大きな牙が特徴的な氷河期の大型生物ケナガマンモスをよみがえらせようと2021年にColossal Biosciences(コロッサル・バイオサイエンシズ)を立ち上げた。およそ実現しそうもない話だが、もし成功すれば、環境、気候変動、それに保健医療の各分野で実際に大きな意味をもつ。

投資会社TWGグローバル主導の資金調達ラウンドで、同社が評価額102億ドルで2億ドルを調達したことにより、最高経営責任者(CEO)であるラムの個人資産は今や37億ドルにのぼるとみられる。一方で、事業立ち上げ以前から研究チームを率いてきたチャーチは、コロッサル株を一切もっていない。「もし私が10億ドルをもっていたとしたら、全額をこの研究のために使うだろうね」(チャーチ)

突拍子もないアイデアを追求することで有名なチャーチは、2008年ごろから有史以前のケナガマンモスの遺伝子配列の解析を試みてきた。

英俳優のソフィー・ターナー(左)とコロッサル・バイオサイエンシズのベン・ラムCEO(右)(Jack Taylor / SXSW London / Getty Images)
英俳優のソフィー・ターナー(左)とコロッサル・バイオサイエンシズのベン・ラムCEO(右)(Jack Taylor / SXSW London / Getty Images)

「私は『ジュラシック・パーク』の原作を楽しんだ世代なのさ」(チャーチ)

多くの人と同じように、チャーチも子ども時代、絶滅した巨大生物たちに魅了された。1984年に最初に開発したゲノム配列解析の手法は、ヒトで胃潰瘍を引き起こすヘリコバクター・ピロリ菌の初のゲノム配列解析に結びついた。彼は約50社のバイオテック企業の共同創業者でもある。

自らの夢であるケナガマンモス復活の研究にとりかかった当時、チャーチはこれをビジネス化しようとは思ってもいなかった。実現の見込みもなかったため、投資家に売り込もうとさえしなかった。2013年には伝説的起業家ピーター・ティールに話し、10万ドルを受け取ったが、それは研究資金としてはまったく不十分だった。

「そこにベンが現れて莫大な資金調達を手伝ってくれたんだ」(チャーチ)

ラムはこれまでに単独または共同で5つの企業を創業し、いずれも最終的には売却している。そして19年に、ケナガマンモスの復活を目指すチャーチの研究に関する記事を読んで連絡してきたという。2人はハーバード大学にあるチャーチの研究所で会い、21年9月にシード基金1,500万ドルでコロッサルを立ち上げた。

研究は、ケナガマンモスの死骸を北極の永久凍土から掘り起こしてゲノム配列を解析し、現存する生物のなかで遺伝的に最も近いアジアゾウとの相違点を調べるところから始まった。チャーチと彼の研究チームは、ゲノムを解読、理解、比較するための特別なツールを開発。コロッサルは低温の環境に耐えうるマンモスと象のハイブリッドを生み出すために、そうした遺伝学的技術を使っている。

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文=エイミー・フェルドマン 写真=ジョン・デイビッドソン 翻訳=フォーブス ジャパン編集部 編集=森 裕子

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