6割がリピートするノマド・クルーズの本質
ノマドの移動の動機はロケーションではなく、人とのつながりであるという事実を裏付けるもう一つの事例が「ノマド・クルーズ」だ。同社はクルーズ船の一部を貸し切り、トーク、ワークショップ、ピッチイベントなどのデジタルノマド向けプログラムで構成されるカンファレンスを中心としたオールインクルーシブな旅を提供している。
今年10月には、米シアトルを出発し、ハワイやフィジーを経由してオーストラリア・シドニーに到着する27日間のクルーズを開催予定。募集参加人数は300人で、最低価格は相部屋で6000ユーロ(約100万円)、最高価格のシグネチャースイート1人利用の場合は15100ユーロ(約260万円)だ。来年2月には、シンガポールから香港に向かう1週間のクルーズも予定されている。
ノマド・クルーズには過去10年間で、70カ国以上から2500人以上のノマドが参加し、その約6割がリピーターという高いリテンション率を誇る。BNFでも数多くのリピーターに出会った。彼らが価値を見出しているのは、旅行先ではなく家族のような存在である「仲間」。上陸してからも船上で出会った仲間と旅を続けながら、世界一周旅行を継続するノマドたちがいるという事実にも納得がいく。
ノマドクルーズの目的は人を繋げることと、彼らを輝かせることだと同社。創業者でCEOのヨハネス・フォルクナー(Johannes Voelkner)は、「ノマド・クルーズは、孤独や孤立といったデジタルノマドが抱える課題の解決につながる」とも語る。
実際、参加者の73%が単独での旅人で、年齢の中央値は30〜45歳。クルーズには一般の乗客も同乗するが、イベントスペースやダイニングホールはノマド・クルーズ専用となっている。限られた空間での共同生活が出会いや対話を加速させ、ピッチイベントやタレントショーなどの機会も相まって、ビジネスやプライベートにおける新たなパートナーシップが築かれるという。
後編では、デジタルノマド・ビザ制度や、地方の魅力を活かした新しい事業モデルに触れながら、デジタルノマドのこれからについての考察を深める。


