暗号資産

2025.07.28 14:30

1年で株価100倍のメタプラネット ビットコイン傾注の運命やいかに

サイモン・ゲロヴィッチ|メタプラネット代表取締役社長

サイモン・ゲロヴィッチ|メタプラネット代表取締役社長

2025年7月25日発売のForbes JAPAN9月号は「次のバフェット・モデルを探せ」特集だ。一代で1,500億ドルの資産を積み上げたオマハの賢人、ウォーレン・バフェットの引退表明というビッグニュースは、瞬く間に世界中に響きわたった。足元では、トランプ第二次政権の関税政策によって世界経済の不透明感が高まり、景気の先行きが読めない不安相場に。金融マーケットは大きな潮目を迎えた可能性がある。投資家たちはこの変化にどう向き合っていくべきか。有力ファンドマネージャーやトップストラテジスト・アナリスト、株価好調企業の経営トップ、著名な個人投資家、海外著名人らに総力取材。これからの最良の資産運用のあり方を探した。

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「日本版ストラテジー」として、株式市場を連日にぎわせているメタプラネット。ホテル業からビットコイン投資への大転換を決めた経営トップは今、何を考えているのか。


東証スタンダード上場のメタプラネットの株価上昇がすさまじい。ホテル運営を主業としていた同社だが、2024年4月にビットコインへの投資・長期保有を柱とする「ビットコイントレジャリー事業」への大転換を表明して以降、株価は急騰。時価総額は25年6月に一時1兆円を超えた。今後の展開を社長のサイモン・ゲロヴィッチはどう見ているのか。

──この1年数カ月で株価は約100倍に急騰した。

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サイモン・ゲロヴィッチ(以下、ゲロヴィッチ正直に言えば、ここまで急速な変化が起きるとは想定していなかった。日本には、ビットコインへの安全で明快かつ(ビットコインに直接投資するより)税制上有利なエクスポージャーを提供する上場企業に対して、大きな未開拓の需要があるとは考えていた。それがわずか1年で、国内で最もパフォーマンスの高い銘柄となり、記録的な出来高を達成し、時価総額は1兆円に達した。

この爆発的な成長は、単に株価が上昇したのではなく、より深い認識が広がりつつあることを反映していると考えている。つまり、「ビットコインは単なる資産ではなく、新たな金融時代の基盤である」という認識だ。私たちは早い段階で動き、決断し、今は先頭に立っている。

そしてこれは「ビットコイントレジャリー企業」という新しい企業モデルに構造転換した当社に対する再評価が始まった証しだ。特に日本のように保守的でありながらも資産価値を求める資本市場においては、非常に象徴的な変化だ。

──そもそも、なぜビットコイントレジャリー事業に参入したのか。

ゲロヴィッチ:突発的なものではなく、私自身の経験や確信、そして「破壊されないものを探したい」という明確な意志に基づいてる。

コロナ禍で当社のホテル事業は大きな打撃を受けた。旅行需要は消え、売り上げは急減し、従来のビジネスモデルがいかにもろいかを痛感した。ロックダウンの静けさのなかで、マイケル・セイラー(仮想通貨投資で成長を遂げる米ストラテジー社の創業者)のインタビューを聴くようになった。彼の語る「ビットコインは究極のトレジャリー資産」という言葉に深く共鳴した。私には応用数学と金融のバックグラウンドがあり、彼の話には整合性があると理解した。それは利益を追う話ではなく、壊れないもの、永続するものを探す話だった。

23年には確信をもつに至った。法定通貨ベースの金融システムは構造的に不安定で、インフレは不可避だ。ほとんどの企業財務はこの点について受け身で、価値を失っている。ビットコインならば、企業のバランスシートを「武器」にし、(発行総量に上限がある)希少性を通じて株主価値を築ける。

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文=中田浩子 写真=小田駿一

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