激化する競争
Lovableは現在、1日あたり約100万ドル(約1億4700万円)のサブスクリプション収益を上げているが、競争は激化している。同社のツールは、ポートフォリオサイトや簡易プロトタイプの制作に威力を発揮するのだが、この分野にはFigmaやWix、Squarespaceなどのユニコーンが競合として存在する。これらライバルもAIツールの開発を進めており、Figmaは年初にコード生成ツールを発表した。また、ナスダック上場のWixは、6月に創業6カ月のAIコーディングスタートアップを8000万ドル(約118億円)で買収した。
また、Lovableにも限界がある。同社ツールは、ウェブデザインには優れているが、複雑なアプリのバックエンド開発には人間の手が必要だ。オランダのAIエンジニアで、Airweaveと呼ばれるスタートアップを設立したレナート・ヤンセンは、GmailなどのアプリをAIエージェントとつなぐプロダクトの試作品をLovableで作成してYコンビネータに採択された。しかし、技術的なバックエンドはLovableのみでは対応しきれず、手作業で残りのコードを全て書き直したという。
ただしそれでも、最初の開発スピードの速さは大きなアドバンテージだった。「Lovableがなければ、ここまで具体的な出発点を得られなかった」と彼は語る。Airweaveは現在、月に1万7000ドル(約250万円)の収益を上げており、先日600万ドル(約9億円)を調達した。
Anthropicの「Claude」に代表される基盤AIモデルに依存
もうひとつの課題は、Lovableが他のバイブコーディング系のスタートアップと同様に、Anthropicの「Claude」に代表される基盤AIモデルに依存している点だ。LovableはこのAIモデルの利用に毎月数百万ドル(数億円)を投じており、他のスタートアップの中にはさらに多くの額を支払っている企業もある。Anthropicの推定売上は今年、40億ドル(約5880億円)に到達する見込みだと報じられており、直近の評価額が600億ドル(約8.8兆円)に達した同社は、自社のコード作成ツールを直接提供し始めている。
こうした競争に対して、オシカが打てる手はそう多くはない。そのため彼は、人に本当に喜ばれるプロダクトを作り続けることや、より優れた機能をより安価に実現できるAIモデルを見極めて柔軟に乗り換えていくことに注力している。「人間のことは人間が一番よくわかっている。そして、Lovableは、人々のアイデアを数分で形にできるようにする実現のためのツールなんだ」とオシカは語った。


