起業家

2025.07.28 08:00

スウェーデン発「史上最速で成長のソフトウェア企業」、Lovableを生んだ34歳の起業家

Robert Way / Shutterstock.com

スウェーデンの名門工科大学出身の起業家

オシカは、最初から本格的なエンジニアだったわけではない。ただ、12歳の頃から、今のLovableなら数分で作れてしまうようなシンプルなゲームを自分でプログラミングしていた。

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スウェーデンの名門、KTH王立工科大学で物理学を学んだ彼は、スイスにある世界最大の素粒子物理学研究所のCERNに加わったが、わずか数カ月でそこを去ったという。世界中から優秀な物理学者が何千人も集まるCERNで、オシカはすぐに「ダークマターの探索」のような実現不可能なプロジェクトに何年も取り組むことが、人間の力の無駄遣いではないかと感じ始めたという。「産業界で会社を作るほうが、はるかに大きなインパクトを与えられると気づいたんだ」と彼は語る。

彼はその後、ストックホルムにあるトレーディング会社Ampfieldに短期間勤めた後、2017年に教育系AIスタートアップに参加。その後、オリバー・エドホルムとともにDepict AIを共同創業し、CTOを務めた。同社は、小売業界向けにアマゾン式の商品レコメンドアルゴリズムを開発・提供する企業としてYコンビネータのプログラムに採択され、1年未満で収益100万ドル(約1億4700万円)を達成し、2022年にはTiger Globalを含む大手VCから1700万ドル(約25億円)を調達した。

「自分でこの巨大な波に乗る方法を見つけるしかないと思った」

しかし、Depict AIの成長は、パンデミック後のEコマースブームの沈静化とともに鈍化した。その一方、ChatGPTの登場によりAIブームが到来した。「DepictでAIを取り入れるか、自分でこの巨大な波に乗る方法を見つけるしかないと思った」と、オシカは当時を振り返る。

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彼はその後、余暇の時間を使って「GPT Engineer」というAIツールを開発し、2023年6月にGitHub上で公開した。するとこのアプリは、ほぼ一晩で同プラットフォームのトレンドページのトップに躍り出た。「これは間違いなくいける」と確信したオシカは、Depictの同僚のファビアン・ヘディンを共同創業者兼CTOに迎えて自身の会社を立ち上げた。そして2人は、コード中心だったGPT Engineerを、誰でも使えるビジュアルツールへと進化させる方針を固めた。

「これはものすごく強力なツールになると実感した」とヘディンは振り返る。そして2023年10月、2人はVCのHummingbirdの主導で800万ドル(約12億円)のシード資金を調達した。

実は、最初のバージョンのLovableは失敗に終わったのだが、その後は単なるゲームや静的サイト以上のものを生み出せるように再設計した。そして、2024年11月の再ローンチ後の1カ月で500万ドル(約7億円)超の収益を上げた。

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編集=上田裕資

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