起業家

2025.07.28 08:00

スウェーデン発「史上最速で成長のソフトウェア企業」、Lovableを生んだ34歳の起業家

Robert Way / Shutterstock.com

評価額2646億円で、294億円を調達

Lovableは先日、シリコンバレーの名門ベンチャーキャピタル(VC)、Accelの主導で2億ドル(約294億円)を調達したが、同VCのパートナーでロンドン在住のベン・フレッチャーは、自身でもLovableのツールを使用した後に出資を決断した。彼はある週末、ピックルボールのトーナメントを記録するアプリをLovableで開発したのに続いて、スタートアップの売上データをAccelが分析するためのツールを開発した。今回の資金調達によって従業員45人のLovableの評価額は18億ドル(約2646億円)に達し、共同創業者が保有する推定50%の持分の価値は合計9億ドル(約1323億円)に達した。

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「Lovableは、あなたのためのプロダクトを作ってくれる、自分の意見を持ったCTOのような存在だ」とオシカCEOは語る。彼は最近、Lovableのプロジェクトに個人としても出資するようになったそうだ。

マイクロソフトやグーグルも参戦、激化する「バイブコーディング」市場

この2億ドル(約294億円)の資金は、これまでに調達した2300万ドル(約34億円)に上乗せされる。これによりLovableは、評価額12億ドル(約1764億円)で9700万ドル(約143億円)を調達したReplit、1月に1億500万ドル(約154億円)を調達してフォーブスの「ネクスト・ビリオンダラー・スタートアップ」に選出されたStackBlitzなど、資金力のあるベイエリアの競合企業に対抗する構えだ。

しかし、Lovableが警戒すべきは、新興企業のみではない。「バイブコーディング」という流れを生み出したOpenAI、GitHub Sparkを手がけるGitHub、Firebase Studioを手がけるグーグルといったAIの巨人たちもこの市場に注目し参戦している。Lovableやそのライバルたちを支える最新のAI技術は、シリコンバレーのプロ開発者の世界にも急速に浸透しているのだ。CursorやCline、Cognitionといったスタートアップのコード自動生成ツールは、開発のやり方そのものを変えつつある。

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マイクロソフトのサティア・ナデラは、自社のコードの最大30%がAIによって書かれていると主張しており、グーグルのサンダー・ピチャイも同様の主張をしている。ピチャイは最近、AIコードツールを強化するためにWindsurfの創業者を24億ドル(約3528億円)で引き抜いたと報じられた。一方で、これまで引く手あまただったソフトウェアエンジニアは、この2社でレイオフに直面している。テック業界の採用動向を追跡するVCファンドのSignalFireによると、昨年は初級レベルの開発者の採用が25%減少した。

プロではなく、すべての「作り手」に向けたツール

しかしLovableはプロ向けツールを名乗るつもりはない。同社のユーザーの多くは、テクノロジーが好きなクリエイターやデザイナー、起業家たちだ。「プロの開発者は確かに大事だが、彼らは市場のほんの1%にすぎない」とAccelのフレッチャーは語る。

コードを書いた経験が一度もなく、Tumblrのページを少し編集した程度だったサンフランシスコの起業家のテレサ・アノジェにとっても、Lovableはまさにゲームチェンジャーだった。彼女は長年、自身のキャリア系ニュースレター「Remotely Good」を本格的な求人サイトにしたいと考えていたが、資金調達と事業拡大に行き詰まっていた。

しかしアノジェは、週末にLovableを使って新しいサイトを立ち上げた。「本当に肩の荷が下りた思いだった。こんなツールがあったなんてと思った」と彼女は語る。

Lovableは、誰でも簡単なプロジェクトを無料で作成できるが、より高度な機能やAIを用いたコードの作成機能には、月額25ドル(約3675円)からの料金が必要になる。たとえば昔ながらの携帯ゲーム『スネーク』を作るのに必要なクレジットは1ドル(約147円)相当で、より複雑なアプリなら50ドル(約7350円)以上がかかることもある。それでも、人間の開発者の時給よりはるかに安い。

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編集=上田裕資

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