資産運用

2025.07.28 13:30

投資の神様が未来に託したものとは。バフェットからの「最後の手紙」

ウォーレン・バフェット(イラストレーション=ベルンド・シーフェルデッカー)

ウォーレン・バフェット(イラストレーション=ベルンド・シーフェルデッカー)

2025年7月25日発売のForbes JAPAN9月号は「次のバフェット・モデルを探せ」特集だ。一代で1,500億ドルの資産を積み上げた「オマハの賢人」ウォーレン・バフェットの引退表明というビッグニュースは、瞬く間に世界中に響きわたった。足元では、トランプ第二次政権の関税政策で世界経済の不透明感が高まり、景気の先行きが読めない不安相場に。金融マーケットは大きな潮目を迎えた可能性がある。投資家たちはこの変化にどう向き合っていくべきか。有力ファンドマネージャーやトップストラテジスト・アナリスト、株価好調企業の経営トップ、著名な個人投資家、海外著名人らに総力取材。これからの最良の資産運用のあり方を探した。

ロングセラー『バフェットからの手紙』著者が本誌だけに語った、バフェット引退の舞台裏とバークシャー・ハサウェイの行方は。


「バフェットの退任予告には驚いた。いよいよ『その日が来たか』と……」

米ジョージ・ワシントン大学ロースクール名誉研究教授(法学)のローレンス・A・カニンガムは、こう打ち明ける。5月3日、米投資会社バークシャー・ハサウェイの最高経営責任者(CEO)、ウォーレン・バフェット(94)は同社の株主総会で、今年末にCEO職を退くと発表した。

カニンガムはバフェットと親交がある。また、ロングセラー『バフェットからの手紙【第8版】 世界一の投資家が見たこれから伸びる会社、滅びる会社』(長岡半太郎監修、増沢浩一・藤原康史・井田京子訳、パンローリング刊)の著書としても知られる。

親しみのある人柄やユーモアたっぷりの話術で株主の心をつかみ、世界中の投資家から慕われ尊敬されてきた「オマハの賢人」。そんなバフェットがバトンを託すのは、自身とは個性が違う実直な経営の実務家、グレッグ・アベル副会長(63)だ。

新経営体制の下で、バークシャーの未来はどうなるのか。カリスマ投資家はなぜ今、退任を決断したのか。カニンガム名誉研究教授に話を聞いた。

──まず、バフェットCEOの退任発表を聞いたとき。どう思いましたか。

ローレンス・A・カニンガム(以下、カニンガム彼は10年以上前から、経営体制移行に向けて準備を整えていた。それについては、2014年の拙著『Berkshire Beyond Buffett』(未邦訳、仮題『バフェットを超越したバークシャー』)に詳しい。

だが、時期は知らなかっただけに驚いた。発表を聞いたとき、「その日が来たか」と思った。実は、その1週間ほど前、オマハでは、あるうわさが広まっていた。彼の子どもたちがアベルの家に出向き、特別なランチミーティングを行ったことで、「何か大きな発表があるのではないか……」と。

──あなたは10年前のインタビューで、「バフェットは認知症にならないかぎり、死ぬまで仕事を続けるだろう」と言いました(弊誌2015年8月号)。

カニンガム:彼は認知症ではないが、バークシャーに必要な、1日当たりの生産的な労働時間をこなせなくなった。バフェットによれば、何より重要なのは新経営体制、特に「アベルへの信頼」だ。

彼がバークシャー株を売却しないと明言したことにも、大きな意味がある。CEO退任後も会長職にとどまり、筆頭株主であり続けるという点も重要だ。バフェットはCEOをはじめ、会長や最高投資責任者(CIO)、筆頭株主という4つの役割をこなしてきた。アベルに委ねるのは、そのうちのひとつだ。隠居生活に入るわけではない。

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インタビュー=肥田美佐子 イラストレーション=ベルンド・シーフェルデッカー

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