資産運用

2025.07.28 13:30

投資の神様が未来に託したものとは。バフェットからの「最後の手紙」

ウォーレン・バフェット(イラストレーション=ベルンド・シーフェルデッカー)

──バフェット氏は2019年、「私たちには素晴らしい取締役たちがいます。彼らは常に株主にとって正しいことをしてくれるでしょう」と、株主に向けて書いています(第10章)。

advertisement

カニンガム:バフェットは自社の幹部を「オールスター」と呼ぶ。産業界屈指の経営陣だ。企業のCEOにとって、バークシャーへの身売りは大きな栄誉だ。

同社が売却先として選ばれ、「オールスターが集まる場所」という評判を維持することは、バークシャー文化の重要な部分を成している。アベルは、そのために努力を重ねなければならない。多くのCEOが「バークシャーに入りたい」と思う理由のひとつは、バフェットの存在にあるからだ。

投資家が学ぶべき2つの教訓

──割安株購入や長期投資など、バフェット氏の教えは数多いですが、投資家が彼から学ぶべき教訓は?

advertisement

カニンガム:重要な教訓はふたつ。まず、投資対象を自分の「能力の範囲内」にとどめることだ。自分の能力範囲、つまり、理解できる分野を見定め、そこから外れないようにする。

ふたつ目は、「どの分野が得意か、わからない」「どの分野もダメだ」としたら、投資先の事業分析は不可能であることを肝に銘じるべきだ、という点だ。その場合は、低コストの分散型インデックスファンドをなるべく早く購入し、無期限で保有し続けるのがベストな投資戦略だ。

その助言の礎になっているバフェットの理論は、現在のように「不確実性に満ちた状況下で浮き沈みがあっても、長期的には、株価の上昇が下落を上回る傾向がある」というものだ。世界史を振り返ると、実際、ふたつの世界大戦や大恐慌、冷戦、コロナ禍、そして関税戦争など、数々の問題が起こりながらも、経済はもちこたえてきた。

長期投資家は、特に低コストのインデックスファンドを購入することで、経済の繁栄を享受できる。

──今でも、バリュー投資には大きな可能性があると思いますか。

カニンガム:その可能性はある。企業価値に比べて株価が割安な企業に着目する「バリュー投資」は、市場全体で見ると少数派だ。現在、市場を席巻しているのはインデックス投資だ。

とはいえ、バリュー投資は株価形成プロセスの重要な部分を占めている。もちろん、バリュー投資にも浮き沈みがあった。インデックス投資ほど実績が上がらないときは、「バリュー投資は終わった」といわれる。だが、市場の風向きが変わると、バリュー投資家のほうが高収益を生み出すこともある。

バリュー投資は永遠だ。人々はバフェットから無限に学ぶことができる。

──バークシャーは6年前から日本の5大商社に投資しています。2024年版「株主への手紙」では、商社の資本配分や経営陣を高く評価。割安な株価に驚いたとし、5大商社の保有比率は今後、若干高まるとしています。

カニンガム:バフェットは今年の株主総会で、アベルが日本の5大商社と良好な関係を築いていることを示唆した。これは重要な点だ。アベルはバフェットより、はるかにグローバルな人物だ。アベルが率いたエネルギー部門は、世界のあちこちで事業を展開している。

バークシャーにとって、日本企業との連携は、さらなる事業拡大への道につながるかもしれない。(続きは7月25日発売「Forbes JAPAN 2025年9月号」でご覧ください。)

Courtesy of Lawrence Cunningham
Courtesy of Lawrence Cunningham

ローレンス・A・カニンガム◎ジョージワシントン大学ロースクール名誉研究教授。デラウェア大学ジョン・L・ワインバーグ企業統治センター所長。コロンビア、コーネル、ハーバード、ミシガン、UCLA、バンダービルトなど多くの主要大学の学報に研究論文を掲載。名著『バフェットからの手紙』は第8版まで版を重ねている。

インタビュー=肥田美佐子 イラストレーション=ベルンド・シーフェルデッカー

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事