資産運用

2025.07.28 13:30

投資の神様が未来に託したものとは。バフェットからの「最後の手紙」

ウォーレン・バフェット(イラストレーション=ベルンド・シーフェルデッカー)

──2023年11月、バークシャーのチャーリー・マンガー副会長が99歳で他界しました。バフェット氏は、盟友を失ったことで意気消沈し、退任の決断に至ったのでしょうか。

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カニンガム:チャーリーの死は退任の決断に多大な影響を及ぼした。彼が生きていたら、バフェットは退任しなかっただろう。ふたりは何十年間も一緒に働き、ほぼ毎日、電話で話し、多くの喜びや挫折を分かち合った。バフェットは盟友の死で弱気になり、孤独を感じ、「潮時だ」と思ったのだろう。

バフェットにとって、チャーリーは、まさに「alter ego(分身)」だった。親友よりも深い、夫婦より親密な、知的に切っても切れない関係だった。

──バークシャーはどうなるのでしょうか。バフェット氏は2019年、「株主への手紙」のなかでマンガー氏と自身の年齢に触れ、バークシャーは、ふたりが「旅立つときに100%備えている」ため、心配無用だと語っています(『バフェットからの手紙』第10章)。

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カニンガム:バークシャーも多少は変わるだろう。アベルは、バフェットとは一味違う経営者になる。事業運営の豊富な経験を武器に傘下の企業の幹部と膝を交え、問題解決に向けて手を貸し、指導するのではないか。

企業文化も若干変わるだろう。アベルは、部下が平均以下の業績に甘んじることを許さないと思う。合理性や分散化、自律性、信頼、長期思考といった要素は維持されるだろうが。

そこで、問題になるのは、株主資本に対して高い収益率を達成し続けることができるかどうかだ。バフェットが60年間も株主に愛されてきた背景には、人柄に加え、高収益をもたらしてきたという事実がある。会社は株主の忠誠心で存続するが、それには、株主資本の収益率を高く保ち続ける必要がある。それがアベルの仕事だ。

問題は、苦戦した場合だ。株主は、すぐに動き出すのか? それとも、挽回の機会を与えるのか? 長期投資家は、半年から1年は静観するだろう。だが、短期投資家は圧力をかけ始める。バークシャーの存続は株主にかかっている。

退任後も強く残る影響力

──あなたの5月7日付ニュースレターには、こう書かれています。「もはやバークシャーの最盛期は過ぎたという見方は、バフェットの最大のレガシーを見落としている。それは、彼が、退任後も存続し続ける組織をつくり上げたことだ」と。

カニンガム:「永続性」を目指すバークシャーの文化に照らすと、アベルのCEO昇格は最初のステップにすぎない。最も重要なのは、バフェットが自社株を売却せず、筆頭株主であり続けることだ。彼がバークシャーの議決権を約30%保有しているおかげで、物言う株主が同社を攻撃することはない。

──次期CEOはどのような人ですか。

カニンガム:アベルの優れた点のひとつは、自分が何者であるかを心得ていることだ。第2のバフェットであるかのように振る舞うこともない。彼はショーマンではない。規律ある人物だ。株主が、彼を「よく知らない」という理由で懐疑的になっているとしたら、近視眼的すぎる。典型的な米国人の発想だ。まずはチャンスを与えるべきだ。

後継者選びは、バフェットが行ってきた決定のなかで最も重要なものだ。ふたりの交流は四半世紀に及ぶ。バークシャーが米ミッドアメリカン・エナジーを買収した2000年以来だ。当時ミッドアメリカンの幹部だったアベルは、バークシャーのエネルギー部門の頂点に上り詰めた(注:その後2018年、非保険部門の副会長に就任)。

ふたりは頻繁に話し合い、緊密な関係を築いてきた。バフェットがアベルに助言を行うとしたら、こう言うだろう。「自分の価値観や信条に忠実であり続けなさい」と。

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インタビュー=肥田美佐子 イラストレーション=ベルンド・シーフェルデッカー

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