━━YOSHIKIさんご自身、「AI YOSHIKI」というAI開発プロジェクトを立ち上げています。これはどのような経緯で始まり、最終的にはどういったゴールを想像しているのでしょうか。
YOSHIKI:まず、AIの流れは止められないだろう、と。そうした流れの中で、AIとどう向き合うか考えるとき、開発の外側からの観点だけだとわからないことがある。両方から見てみないとわからない、それなら開発側にも回ってみよう、という考えからです。芸術家として、そして一人の市民としてAIがどうなるかを見つつ、自分もAIの開発にかかわる、という両方の観点からプロジェクトを始めました。
━━まずは自分自身でAIを理解しようと努めないことには、ということですね。面白そうなプロジェクトですが、「AI YOSHIKI」が成立すると、人間であるYOSHIKIさんは有限な一方で「AI YOSHIKI」は生き続けることになります。
YOSHIKI:そうですね。
━━その背景にはYOSHIKIさんの死生観や永続性というか、AIを通じて自分を後世に残したい、というような特別な想いがあったのでしょうか。
YOSHIKI:その点に関しては、仮に自分が作らなかったとしても、きっと他の誰かが作っただろうと思うんです。実際、生成AIで作られたマリリン・モンローの「Digital Marilyn(デジタル・マリリン)」が開発されたりしています(編集部註:ニュージーランド発のAI企業「Soul Machines」開発による、故マリリン・モンローをAIで再現した会話可能なデジタルアバター)。そうした提案は、僕のもとにすでに何年も前から届いていましたから。それならば、自分が監修できるうちに作ってしまったほうがいい、と考えたわけです。
━━YOSHIKIさんをはじめとした作曲家・作詞家に対して大変失礼と思いつつもお尋ねしますが、生成AIといった新技術により、音楽を作りやすくなると想像しています。少なくとも、作詞・作曲といった創作プロセスや表現に影響を及ぼす可能性があるでしょう。こういった「音楽制作の民主化」についてはどのようにお考えでしょうか。そもそもYOSHIKIさんが作詞・作曲をされるとき、生成AIを活用される可能性はありますか?
YOSHIKI:今のところ、ありません。僕はバックグラウンドがクラシック音楽なので、譜面に手書きします。作曲の型に関しては、完全に“アナログ”です。その後、レコーディングの過程では、「ソフトウェア・シンセサイザー」(編集部註:コンピュータ上で動作する仮想的なシンセサイザー)といったさまざまな技術とテクノロジーを使いますけれど、作詞・作曲の過程でAIを使うことはないです。
━━AIを使ったところで、自分がイメージするような旋律や歌詞、あるいはそれ以上のものは出てこないという感覚があるのでしょうか。
YOSHIKI:このままAIが進歩すれば、それなりのものは出てくると思います。ただ、何をもって芸術かというと、たぶん「人に感動を与えることができる」のが芸術の力だと思うんです。はたして、クリックやタップ一つで1秒後にポンと出てきた音楽や歌詞が人に感動を与えられるのかどうか。
例えば、ピアノでもバイオリンでも、ほかのすべての楽器でも、何十年という過酷な努力を重ね、その努力が音になっていく。みんなの前で演奏して「音」に変わっていく――。人は、その過程に感動すると思うんです。それこそクオンタム・コンピューティング(量子コンピューティング)の到来により、AI技術が高速化して音楽を瞬く間に作れるようになったとしても、それで人が感動するのかといえば、その点には疑問が残ります。
人はどれほど美しいものを見ても、そこに至るまでの努力に感動する部分もあるんじゃないか、と。作品ができるまでの「ストーリー」は大事だと思うんですよ。そうしたこともあって、AIをそこまで脅威には考えてはいません。……でも、わかりませんね。五分五分かもしれません。


