音楽

2025.09.19 16:15

「100%で10個」、YOSHIKIを動かすファンの力、死生観、逆算思考

Courtesy of YOSHIKI

━━音楽表現の幅を広げられたということ、そして、ビジネスの面でも新しい挑戦ができるようになったという両面から「幸運」だったということでしょうか。

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YOSHIKI:いや、それはちょっと違いますね。いい質問だと思うんですけど。僕の場合、芸術とビジネスは「微妙な関係性」にあると考えています。はたして芸術がビジネスである必要があるのか。また、ビジネスが芸術である必要があるのか━━。その点は切り離して考えています。

ビジネス的に成功したものの芸術性が高いとは限らない。同じように、芸術性が高いものがビジネスとして成功するとも限らない。「ビジネス的な成功=芸術性が高い」とは思っていません。言い訳に聞こえてしまうかもしれませんが、「なぜ、何十年もアルバムを出さないのか?」「なぜ、音楽業界では一般的なサイクルで新曲を出さないのか?」と聞かれることがあります。

逆に僕は、「なぜ、音楽業界のサイクルで出す必要があるのか?」と疑問に思っています。それはビジネスがあるからそのために出すわけですよね? 極論ですが、自分が生きているうちにものすごい曲を一曲だけも書くことができれば、そして、その曲が何百年も聴かれ続けるのであれば、それだけでもアーティストとしては成功だと思うんですよ。ただ、それだと一般的なビジネスとしては成り立ちませんよね。

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僕は「音楽ビジネス」という言葉自体があまり好きではありません。そうは言ったものの、そのおかげで自分もここまで30年以上もやってこられたのも確かです。では、どうすればいいか。芸術の表現を追求しつつ、ビジネスの面も追求するにはどうすればいいのか。そのことを日頃、考えて生きています。

━━音楽表現としての成功と、ビジネスとしての成功は完全に別物ということですね。

YOSHIKI:そこには境界線があります。

━━AIは音楽表現とビジネスの両面に大きな影響を与えそうです。YOSHIKIさんは、2024年1月の読売新聞のインタビューで、AI周りの知財権・著作権の点で法整備が課題だと指摘し、アーティストの権利をきちんと守るべきとお話しされています。

YOSHIKI:AIに関しては多くの課題がありますが、その一つが「ガードレール」の問題ですよね。それは芸術に限った話ではありません。法規制が適切なのかも議論が必要です。AIについては、(AgentforceなどのAIサービスも展開する、セールスフォース共同創業者兼CEOの)マーク・ベニオフさんなどの友人とよく話します。ビジネス領域にはまた別の課題があると思いますが、芸術においても、どこまでAIと共存していくべきなのかというところですよ。

AIの潮流は不可逆的でしょう。「AI」という、才能に恵まれて知能も高い「とてつもない赤ちゃん」が生まれたのです。重要なのはどう育てるか。育てかた次第で、その“赤ちゃん”が幸せにも、あるいは不幸せにも成長してしまう。「Singularity(シンギュラリティ)」のような段階が訪れることがあれば、どうするのか(編集部註:AIが人間の知性を超える転換点。人類の課題解決を加速させる可能性がある一方で、制御不能なAIが出現するリスクも指摘されるなど、長短それぞれ議論されている)。

すでに、AIの育てかたについて考えて議論する段階に来ています。それは社会生活の全般についてすべきことですし、そのうえで、「芸術家の観点からどうすべきか」を考えることだと思います。

 「芸術の表現を追求しつつ、ビジネスの面も追求するにはどうすればいいのか。そのことを日頃、考えて生きています」(YOSHIKI)  Courtesy of YOSHIKI
 「芸術の表現を追求しつつ、ビジネスの面も追求するにはどうすればいいのか。そのことを日頃、考えて生きています」(YOSHIKI) Courtesy of YOSHIKI
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文 = 井関庸介

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