世界を着実に変えつつあるAI(人工知能)。その影響は、メディアが一時期“聖域”として挙げていた映像や音楽などのクリエイティブな領域にも及ぼうとしている。テクノロジーはいつの時代も、社会のありかたに影響を与えてきた。そしてどの時代にも、「進化」の道を選んできた人たちがいる。
YOSHIKIは、ロックバンド「X JAPAN」のリーダー・ドラマーとして作詞・作曲といった創作活動からプロデュースまで手がける傍ら、さまざまなアーティストのプロデューサーとして活躍してきた。2025年6月20日には、彼によるプロデュースのもと、4人組ガールズ・ボーカルグループ「美麗-Bi-ray-」がデビューを果たしている。
ビジネスの領域でも、音楽レーベル・スタジオの運営、AIでYOSHIKIをバーチャルヒューマン化する「AI YOSHIKI」の開発、着物ブランド「YOSHIKIMONO」や、2024年にミラノコレクションでデビューしたハイファッションブランド「MAISON YOSHIKI PARIS」のプロデュース、自身のワインブランド「Y by YOSHIKI」を展開するなど、その活動は多岐にわたる。
多彩な活動の原動力はどこから来るのだろうか。ワインや服飾といった中・長期的なプロジェクトへの取り組みかたとは。外からはわかりにくいプロデューサー業の内実、その面白さや難しさはどういった点にあるのか。YOSHIKIが、自らの「進化」について語った。
━━ピアノやバイオリンがかつてはそうであったように、どの時代も楽器や音楽機材といった「テクノロジー」は作曲や演奏に多大な影響を与え、音楽の世界を広げてきたと思います。YOSHIKIさんは、人と音楽、テクノロジーの関係性をどのように観察し、考えてきましたか。
YOSHIKI:現代の音楽業界を振り返ると、バイナルのレコードからCDへ変わり、CDからダウンロード、ダウンロードからストリーミング(配信)と流通のかたちが変遷してきました。そのすべての過程に立ち会ってきました。このディストリビューション(流通)の代わり目に立ち会えたのは、幸運だったなと思います。
僕はもともとクラシック音楽が大好きです。音楽に入ったきっかけがベートーベンで、4歳からクラシックピアノを始め、父に買ってもらったクラシックのレコードを聴いていました。でもベートーベンが音楽家として活動していた約200年前は、お客さんの前で「演奏」するという選択肢しかなかったわけです。それが時代とともに音楽を「録音」できるようになり、その録音を誰もが聴けるようになった。それ自体が大きな進歩ですよね。
その延長線上でアナログからデータへと移行した。それもかなりの進歩だったと思うんですよ。その後、CDを経て、インターネットと共に音楽ダウンロードという仕組みになり、モノを買わずに聴けるようになった。大きな革新です。その後、クラウド・コンピューティングが技術的基盤となったことにより、楽曲そのものを自分で所有する必要がなく、配信を通じて聴けるようになった。これが、ストリーミングです。その局面すべてに立ち会えた。奇跡的な時代に生まれたのだと感じています。



