不確実性への前向きな姿勢
デジタルノマドを何年も続けた後、ゲイブ・マルスカはビジネスコンサルタントの会社を経営している。「学校では不確実性に直面しても動じない方法を教えてほしかった」とマルスカは言う。「キャリアを選び、家を買い、1カ所に留まるなど、安定を求めながら大人になった。だが、タイの森の中で顧客との電話の最中にWi-Fiが途切れてしまうような起業家人生への準備は何もしていなかった」。
一連の教育は安全策をとっている。子どもたちに落ち着いて暮らすことを教える。理想とする仕事やパートナー、住宅ローン、家族を確保する、年に一度は休暇を取る、育った場所から数キロメートル以内に住む、など。だがそのような生活は万人向けではない。探検するために生まれてきた人もいる。
高校在学時にビジネスをスタートさせ、指導教諭のもとで安全に失敗を重ねて卒業する生徒を思い浮かべてほしい。そうした生徒は成績証明書だけでなく、挑戦のポートフォリオを携えて卒業する。彼らが不確実性の中で成長するのは、若い頃から不確実性にさらされてきたからだ。15歳のときに反復は完璧に勝ることを学んだからこそ、彼らは数十億ドル(数千億円)規模のビジネスを築き上げるのかもしれない。
起業家視点で学校で教えるべきこと
前述の起業家たちは苦労して学んだ。失敗や機会損失を授業料として支払い、ようやく教訓を得た。
教育システムは現実をチェックする必要がある。学生たちが決して使うことのない公式を暗記する一方で、本物の起業家たちは試行錯誤を繰り返しながらキャッシュフローを理解している。子どもたちがシェイクスピアについて作文を書く一方で、創業者たちは3回の挫折を経てプレゼンの構成を学んでいる。キャリアアドバイザーはリストから職業を選ばせるが、まだ生み出されていない職業もある。こうした隔たりがキャリアや夢、そして何十億もの可能性の損失につながっている。
世界は事業を生み出す人を必要としているのに、学校は従業員を生み出している。成功には大胆さが必要なのに、学校はコンプライアンスを教える。売り込んだりつながったり、また適応できる人にお金が流れるのに、学校は暗記に基づいて成績をつける。
子どもたちに財務諸表の読み方を教えれば、他の人たちが見逃しているチャンスを見つけることができる。売り込み方を教えれば、将来の資金を自分で賄えるようになる。レジリエンスを培えば、親まで巻き込んでしまうような失敗からも立ち直れる。安全な場所で起業家精神を実践させれば、実社会で自分の会社を興すことができる。教育課程を修正してどうなるか見守りたい。


