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2025.07.27 15:00

【私が15歳だったころ】「圧倒的に負けそうな世界に飛び込め」堀江裕介による弱者の戦術とは

堀江裕介|dely 代表取締役

堀江裕介|dely 代表取締役

2025年7月25日発売のForbes JAPAN9月号の第二特集は、世界を変える30歳未満30人「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」特集との連動企画「私が15歳だったころ」。これまでの受賞者のなかから、Homedoor 理事長の川口加奈、 芦屋市長の髙島崚輔、dely 代表取締役の堀江裕介の3人に 15歳のころに経験した、人生のターニングポイントとなった出来事を聞いた。

「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」連動企画、受賞者たちの「15歳のころ」。野球に夢中だった高校時代、“弱者の戦術”を身につけた当時を振り返る。


「朝起きたら、心拍数が上がっていて冷や汗をかいて目が覚めるんです。打ったのに、どんなに走っても一塁にたどり着けなくて」。野球部だった高校時代の夢を今でも見る。ベースに届かない自分。あの頃のプレッシャーが、何年経っても蘇る。

堀江裕介が料理レシピ動画サービス「クラシル」を立ち上げ圧倒的なポジションを確立するのには、“弱者の戦術”があった。そしてそのルーツは、15歳のころ自分の“非才”を痛感した瞬間にある。

17年前の春、群馬県内随一の進学校・群馬県立前橋高校の野球部に入った堀江は、すぐに思い知る。「同じことをやっていたら、絶対に勝てない」と。

中学までは、軽く勉強しただけで成績はトップクラス。野球でも一目置かれていた。グラウンドで活躍する姿に、喜ぶ家族やコーチの笑顔を見るのがうれしくて、物心ついた頃から「野球で活躍することが自分にとっての最高の自己表現」だと信じていた。

ところが、高校に入学した15歳の春、堀江は愕然とした。甲子園を目指す高校野球の世界では、全国レベルの逸材が相手。「積んでいるエンジンが違うんです。努力で越えられる壁じゃなかった」

しかし、諦めたわけではなかった。むしろ「普通にやっても勝てないなら、勝つ方法を考えよう」と開き直った。堀江が取った手段は、“弱者の戦術“の構築だった。

動画撮影とデータ解析で対戦相手の癖や傾向を分析する“偵察班”を自ら立ち上げた。ピッチャーの癖を観察し練習メニューを自分たちで組み立て、戦術で勝率を上げにいった。甲子園常連校の前橋育英高校を相手に1勝をあげたときの感動は忘れない。

「100回中1回勝てる相手だったら、その1回を本番に持ってくる。その確率を最大化する方法を、ずっと考えていました」

このときの「弱者として勝つ」感覚は、のちの起業後の戦いに直結する。「クラシル」を立ち上げた2016年、最大の競争相手は当時時価総額3000億円超のクックパッド。独走する“巨人”に立ち向かおうとする者はいなかったが、堀江は相手が“絶対にできないこと”を見抜いた。

「クックパッドの決算資料を読み込んで『自分たちにできて、相手ができないことは何か』を考え抜きました。当時のクックパッドは利益を出す約束を投資家に対して宣言していたから、『大きな投資はできないはず』と読みました。だから、僕らがCMを全部押さえたんです。売上3億なのに赤字30億。リスクを取ったほうがむしろ勝率は高い、と振り切ったんです」

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文=宮本恵理子 写真=干田哲平

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