その読みと大胆さで、クラシルは一気に存在感を高めた。まさに野球部時代に培った弱者の戦術の延長線だったのだ。
その後、M&Aや事業多角化など攻めの経営で勢いを増し、クラシルのユーザー数は今や4000万人超。「誰かを喜ばせたい」という思いはマスに広がり、24年12月に東証グロース市場に上場も果たした。
負けたと思った瞬間が勝ち
堀江の起業のきっかけは受験日前日に発生した東日本大震災。翌月、ソフトバンク社長(当時)の孫正義氏が個人で100億円を寄付するというニュースに心動かされたことが「起業家」への導きとなった。
「僕の場合は“逃げ”の起業なので」と笑うが、これも15歳で直面した「負け」によって獲得した戦術の応用だ。東大や医学部を目指す同級生を尻目に、高3の秋まで勉強そっちのけで部活や行事に明け暮れていた堀江。戦える場所を自分で作った結果が起業だった。他者とは異なる自分になれる可能性が「負け」には詰まっている。今の15歳にメッセージを送るとしたら「負けたと思った瞬間が勝ち」と伝えたい。
「才能の壁にぶつかることは、痛い。でもそれが、自分だけの“勝てる戦い方”を探すきっかけになる。逃げてもいい。ずらしてもいい。自分の戦い方は、自分で見つけていい」。それを知った15歳のあの日が、今のすべてにつながっている。
「群馬の高校の中の小さなコミュニティから飛び出して、東京で起業して11年。昨年には上場も果たせましたし、このまま国内市場でサービスを広げることだけに集中すればラクですが、そろそろ海外にも挑む時かもしれませんね。スタートアップにとってグローバル市場は、極めて勝率が低い世界であることは分かっています。でも、15歳の頃の坊主頭の自分から言われている気がするんですよ。『圧倒的に負けそうな世界に飛び込んで、戦ってみろよ』って」
ほりえ・ゆうすけ◎1992年、群馬県生まれ。慶應義塾大学在学中の2014年にdely株式会社を設立。2016年にレシピ動画サービス「クラシル」を開始し、2017年8月にはレシピ動画本数が世界一に、同年12月にはアプリが1000万DLを超える。現在は販促費市場のデジタル化を目指す「クラシルリワード」を展開。2024年12月、同社を東証グロース市場に上場。


