中国の飲料大手「農夫山泉」の創業者で会長の鍾睒睒(チョン・サンサン)は、自社の業績の回復と、最大のライバルである杭州娃哈哈(ワハハ)集団で発生した創業者の遺産トラブルを背景に、中国一の富豪の座に返り咲いた。
フォーブスの推計によれば現在70歳の鍾の保有資産は657億ドル(約9兆6000億円)に達しており、その大半を農夫山泉の持ち株が占めている。7月23日時点で中国の長者番付のトップに立つ彼の資産は、TikTokの親会社バイトダンスの共同創業者の張一鳴(チャン・イーミン)の655億ドル(約9兆5700億円)をわずかに上回っている。
鍾のランキング1位への復活は、香港市場に上場する農夫山泉の株価が、主力のミネラルウォーター事業の見通しが好転したことにより年初来で35.8%高となったことを受けてのものだ。昨年は、同社を含む複数の飲料ブランドが節約志向の消費者を取り込もうと値下げ競争を繰り広げたため、業績が悪化していた。
香港を拠点とするエバーブライト証券のストラテジストのケニー・エンは、「中国政府は今年、デフレ圧力に直面する経済を支援するために、さまざまな業界における価格競争の抑制を試みている。これにより、値下げ圧力が緩和されると予想される」とコメントした。
一方、調査会社モーニングスターの香港拠点のアナリスト、ジャッキー・ツァンは、業界のリーダーである農夫山泉について「夏場に消費者がミネラルウォーターをまとめ買いする傾向や、中国のECプラットフォームがフードデリバリー強化のために支給している補助金の追い風を受けている」と指摘した。
7月のリサーチノートでツァンは、農夫山泉の2025年の売上高が前年比13.6%増の487億元(約9940億円)に達すると予想していた。この数字は、同社の茶飲料事業が好調であることも盛り込んでいる。同社は昨年、「前例のない試練に直面した」と年次報告書で記しており、収益はほぼ横ばいの429億元(約8760億円)にとどまっていた。
農夫山泉の鍾はかつて、同じ杭州を拠点とする飲料大手ワハハの創業者で昨年79歳で死去した宗慶後(ゾン・チンホウ)を裏切って富を築いたと非難されたことがある。鍾はこのような主張を否定しているが、農夫山泉は別の批判にも直面した。一部のナショナリスト系消費者が、同社の一部商品のパッケージに日本の神社の写真が使われていたこと、「日本寄り」だと主張して騒ぎ立てたのだった。



