米国人の80%以上が何らかの孤独感を抱えていることが、全米約5万人を対象とした包括的な研究から明らかになった。男性よりも女性、白人以外よりも白人のほうがはるかに孤独を感じやすく、うつ症状や健康状態の悪化に苦しむリスクが高いこともわかった。
「影響の大きさは衝撃的だった」と、研究結果をまとめた論文の筆頭著者で米ハワード大学医学部上級研究員のオルワセグン・アキニエミは述べている。「若年成人、女性、失業者、きちんとした教育を受けられなかった人は、孤独感を訴える傾向が高かった。孤独に苛まれているのは高齢者だけでなく、あらゆる年齢層、あらゆる社会的背景を持つ人々に広がっている」
アキニエミはさらに「孤独を『常に』感じている人は、孤独感を抱いたことのない人と比べて、うつを患うリスクが5倍高く、メンタルヘルスが不調な日が1カ月あたり11日多く、身体的な不調を訴える日が1カ月あたり5日多かった。これらの影響は、年齢、人種、性別、その他の要因を考慮に入れても一貫していた」と説明した。
米科学誌PLOS ONE(プロスワン)に掲載された論文は、「孤独感はすべての人種・民族グループで抑うつリスクを増大させたが、黒人とヒスパニック系の人々では、孤独の程度に関わらずうつ発症のリスクが比較的低かった。これは、文化的または社会的な緩衝メカニズムが存在する可能性を示唆している」と指摘している。
研究チームによると、常に孤独を感じている成人は圧倒的に白人が多かった。研究に参加した米成人4万7318人の73%以上が白人で、うち62%が女性だった。参加者の年齢はほとんどが18~64歳で、強い孤独感を訴える人は若年層にもいたが、45歳以上のほうがその傾向が高かった。
研究チームは「孤独感が単なる情動状態ではなく、心身の健康に測定可能な影響を及ぼすことをはっきり示す研究結果だ」としたうえで「孤独感に対処するのは、うつ病を減らして全体的なウェルビーイングを改善するために重要な公衆衛生上の優先課題である可能性がある」と指摘。「この研究を通じ、弱い立場にある多くの人の実際の体験を調査できた。最も印象的だったのは、孤独感があらゆる面で健康に強く影響することだ。それは、ひそかな孤独感の蔓延への対処が喫緊の問題であることを浮き彫りにしている」と述べている。
アキニエミは「社会的処方(医療機関が薬だけでなく地域における人のつながりを処方する取り組み)やコミュニティー構築プログラム、社会的つながりに関するスクリーニング調査を日常的なケアに組み込むことなどの介入支援が役立つだろう。テクノロジーを活用したツールも、地方やサービスの行き届かない地域では特に、孤立した個人をつなげる一助となる」と説明。しかし、孤独を感じていると認めれば弱さや社会不適応とみなされると人々が認識しているため、そもそも助けを求めることを思いとどまりがちな点が大きな課題だと指摘した。
「孤独感を訴えないことで健康状態が悪化するだけでなく、長期的な害を防げるはずの介入が遅れかねない」とアキニエミは付け加え、「この研究が、孤独は喫煙や肥満と同様に修正可能なリスク要因だとの認識を広める全国的な行動につながることを願っている。今後は、介入支援の評価や、デジタルツールと文化的要因がさまざまな人口グループにおける孤独にどのように影響するかを研究していきたい」と語った。



