宇宙

2025.07.26 10:00

冥王星に達した探査機ニューホライズンズの行方、トランプの運用停止要求を退ける米議会

NASAの探査機ニューホライズンズと、冥王星と衛星カロンのイメージ図(c)NASA/JHUAPL/SwRI

NASAの探査機ニューホライズンズと、冥王星と衛星カロンのイメージ図(c)NASA/JHUAPL/SwRI

いまから10年前の2015年7月14日、NASAの探査機「ニューホライズンズ」が史上初めて冥王星に到達した。ニューホライズンズはその後も航行を続け、現在は太陽から62.13au(1auは太陽と地球の距離)、光速で8.6時間の位置にある。運用中の機体としてはボイジャー1号と2号に続き、3番目に地球から遠方にある人工物とされ、太陽系の謎の解明に貢献することが今後も期待されている。

そのニューホライズンズの電源をトランプ大統領がオフにしようとしている。トランプ政権が5月に発表した2026年度の予算要求案では、NASAの次年度予算を24%削減することを議会に要求。なかでも深宇宙探査を管轄する科学プログラムの部門の予算は47%の減額が見込まれている。

しかし、この大統領要求案に対して米国の上下両院が激しく抵抗。その結果、米東部時間7月15日には下院、17日には上院が同予算法案を棄却し、今年度と同等の予算をNASAに付与することを決定した。しかし、NASAの予算をめぐる政権と議会の攻防戦はその後も継続しており、ニューホライズンズの処遇も文字通り、宙に浮いたままの状態にある。

人類が初めて見た冥王星の姿

左はニューホライズンズが撮影した冥王星、右はハッブルによる画像。ニューホライズンズがいかに冥王星の詳細な情報をもたらしたかが理解できる。左:(c)NASA/JH Univ/SRI、右:(c)NASA/ESA & M. Buie(SwRI)
左はニューホライズンズが撮影した冥王星、右はハッブルによる画像。ニューホライズンズがいかに冥王星の詳細な情報をもたらしたかが理解できる。左:(c)NASA/JH Univ/SRI、右:(c)NASA/ESA & M. Buie(SwRI)

グランドピアノほどのサイズのニューホライズンズは、固体燃料ブースターを5基搭載したアトラスVロケットによって2006年1月19日、ケープカナベラル(フロリダ州)から打ち上げられた。その初速度は史上最速の秒速16.26km(時速5万8500km)に達し、「宇宙船が地球を離脱した最速の速度」としてギネスに認定されている。

月の公転軌道をわずか8.5時間で通過したニューホライズンズは、打ち上げから405日後に木星に到達し、フライバイ(重力アシスト)を実施。これによって冥王星までの所要時間を3年間短縮した。そして2015年7月14日、冥王星に最接近したニューホライズンズは、その高度1万2500kmをフライバイしながら、冥王星の地表を最大50mピクセルの高解像度で撮影。この画像によって人類は初めて冥王星の真の姿を知った。

ニューホライズンズが撮影した冥王星の大地。右手は窒素の氷で覆われたスプートニク平原。左手には標高3500m級の険しい山々が連なる。(c)NASA/JHUAPL/SwRI
ニューホライズンズが撮影した冥王星の大地。右手は窒素の氷で覆われたスプートニク平原。左手には標高3500m級の険しい山々が連なる。(c)NASA/JHUAPL/SwRI
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編集=安井克至

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