最遠の天体を撮影
冥王星はエッジワース・カイパーベルト内にある。それは海王星の公転軌道の外側に、太陽を中心としてドーナツ状に広がる領域であり、氷や岩石からなる小天体の集まりとされる。
冥王星をフライバイしたニューホライズンズは、その後もカイパーベルト内を航行し続け、3年半後の2019年1月には太陽系の外縁天体(Kuiper Belt Object, KBO)であるアロコスに到達し、わずか3500kmの距離から同天体を観測した。KBOを近接撮影したのはニューホライズンズが初めて。アロコスは人類が近接撮影した最遠の天体とされる。
その後、ニューホライズンズはスリープモード(低活動運用モード)に入り、カイパーベルトにおける新たな観測目標をNASAが決定するのを待っている。ニューホライズンズの当初の運用期間は冥王星到達までの9年半だったが、現在では同機がカイパーベルトを抜けると予想される2028年から2029年まで、さらにミッションを延長するのが最善だとNASAは考えている。
しかし、今年5月にトランプ政権が発表した予算要求には、ニューホライズンズの運用停止案が盛り込まれていた。これにより、太陽系に関する重要なデータをもたらし、今後も新たな発見が期待されるこの探査機の機能が停止されようとしている。
米下院「予算はあなた方が決めるものではない」
米国の予算決定プロセスはただでさえ複雑だが、過去に例のないトランプの策略が、2026年度の予算編成をより複雑にしている。
5月にトランプ政権が発表した予算要求案では、2026年度のNASAの予算を今年度の248億ドル(約3兆6700億円)から188億ドル(約2兆7800億円)に減額するという、かつてない削減案を議会に要求した。しかし、米政府の予算編成プロセスにおいて、その決定権は議会にある。その結果、7月15日には下院の歳出委員会がこの削減案を棄却し、NASAに前年同等の248億ドルの予算を付与することを可決。さらにその2日後には、上院が同法案を249億ドル(約3兆6900億円)に調整したうえで可決した。


