ウクライナが保有する防空システムにはほかに、ソ連時代にさかのぼるS-200とS-300、米国とノルウェーが共同開発したNASAMS、ドイツとスウェーデン、イタリアが共同開発したIRIS-T、フランスとイタリアが共同開発したSAMP/Tとそのアステルミサイルなどがある。たとえばNASAMSとパトリオットを比較した場合、NASAMSははるかにコストが低く、巡航ミサイルなどに対処できるのに対して、パトリオットは弾道ミサイルの迎撃に適している。
ウクライナは過去3年で兵器の国内生産を増やしてきたが、パトリオットに相当する国産の防空システムはない。この種のシステムの開発では試験や欠陥の修正を重ねる必要があり、相当な時間もかかれば莫大な費用もかかる。弾道ミサイル用迎撃ミサイルのハードウェアを製造するのにも何年も要する。現状、国産の弾道ミサイル用防空システムを開発・製造するのはウクライナの能力を超えており、ウクライナはむしろネプトゥーン(ネプチューン)巡航ミサイルやフリム(ウクライナ語で「雷」)-2短距離弾道ミサイルの開発・製造に注力してきた。ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領は、西側支援諸国からの防空システム支援が必要だと繰り返し訴えている。
ロシアのミサイル備蓄
ロシアによるミサイル攻撃の規模を考えると、ロシアが現在のミサイル備蓄を保っていけるのかは依然としてはっきりしない。ロシアはとくに戦争1年目には、定期的にミサイル不足に陥っていた。2023年にもミサイル備蓄が再び減り、代わりにより安価なドローンの使用を増やすようになった。その後、ロシアはミサイル生産を増強した(イスカンデルは月に40〜50発程度生産しているとみられる)ほか、兵器の調達で北朝鮮とイランも頼りにするようになった。
ウクライナ国防省情報総局(HUR)の情報として報じられているところでは、ロシアは2025年7月上旬時点で、短距離弾道ミサイルをおよそ300発保有していると推定されている。内訳はイスカンデルが250発超、北朝鮮製のKN-23が50発ほどとされる。5月時点では保有数は580発と推定されており、この間に急速に消耗したことになる。


