ウクライナのパトリオットシステムもこれまで、きわめて優れたパフォーマンスを見せており、ロシアのキンジャール空中発射弾道ミサイルやイスカンデル短距離弾道ミサイルなどを撃破してきた。ロシアはキンジャールについて、最高速度マッハ10で飛翔する極超音速ミサイルだと主張し、迎撃不可能だとも言っていたが、ウクライナのパトリオットはキンジャールに対しても有効であることを繰り返し示している。パトリオットは極超音速ミサイルを迎撃するようには設計されていない。ウクライナは2024年2月、ロシア軍機を一月で10機超撃墜した際にも、パトリオットを前線近くに展開させて使用していたと推測されている。
ウクライナは、ロシアによるパトリオットシステム自体を破壊しようとする試みもどうにか阻んでいる(編集注:公開情報分析サイトのOryxによると、これまでにパトリオットの発射機計2基の撃破と損傷、レーダー1基の損傷が視覚的に確認されている)。2023年6月28日、ロシアは自国で最も高性能で高価な部類に入るミサイルであるキンジャールとイスカンデルを使って、首都キーウを守るパトリオットシステムを破壊しようとしたが、パトリオットは飛来した両ミサイル計34発をすべて撃墜したと伝えられる。ウクライナはパトリオットを保護するために工夫を凝らし、たとえば射撃管制装置の外装に鉄板を取り付け、ミサイルの破片や爆風からの防護を図っている。
パトリオットシステムとは
パトリオットシステムは、米軍が1991年にイラクで実施した「砂漠の嵐作戦」で初めて実戦使用された。レーダー1基、射撃管制装置1基、電源車1両、発射機最大8基などから構成され、各発射機には迎撃ミサイルが最大4発(編集注:旧型のM901発射機の場合。PAC-3弾に対応したM902発射機は最大16発)搭載される。パトリオットミサイルは弾道ミサイルへの対処能力を与えられている。弾道ミサイルは地表からはるか離れた高高度を飛翔し、音速の数倍という高速で目標に向かって降下してくるため、防空システムにとって最も迎撃の難しい目標だ。巡航ミサイルやドローンはよリ低い高度をより低速で飛行するため、防空システムは迎撃のための時間的余裕がもっとある。
ウクライナに供与されているパトリオットミサイルには、航空機や巡航ミサイルに対処するPAC-2と、主に弾道ミサイルに対処するPAC-3がある。PAC-3は主に「ヒット・トゥ・キル(hit-to-kill)」方式で撃破するように設計されている。これは、ミサイルが空中で爆発してその破片で目標を破壊するのでなく、ミサイルが直接ぶつかって目標を破壊する方式だ。PAC-3はPAC-2よりもはるかに軽量で、機動性が高い。


