起業家

2025.07.27 13:00

聴力を失い「完璧な記憶」に常時録音+音声認識AIで挑む、Limitless創業者

連続起業家のダン・シロカー(Photo By Liz Hafalia/The San Francisco Chronicle via Getty Images)

仕事から家庭まで支える「ライフコーチ」

Limitless Pendantは、ビジネスや生産性向上といった用途のほかに家庭生活にも応用できる。シロカー自身も、「自分がより良い父親になれるよう、助けてくれている」と明かす。「毎朝アプリからプッシュ通知が届き、前日に自分が言ったことや聞いたこと、そして子どもたちとのやり取りをもとに、『もっとこうすべきだった』という具体例を教えてくれる。こんな『ライフコーチ』的な機能は、1日を通しての出来事を記録できる存在があってこそ実現する」と彼は語る。

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注意力や記憶に課題を抱える人にとっても、本来の才能を引き出す手助けとなる可能性がある。

設計段階からのセキュリティ確保

AIの導入において最大の懸念の1つとなっているのがプライバシーだ。シロカーによれば、Limitless Pendantは設計段階からセキュリティを重視している。「このデバイスの認証と暗号化は、アップルのアクセサリーキットを用いることで厳格なセキュリティ基準に沿って開発しており、データが盗まれることはない。たとえペンダントを紛失しても、音声データは暗号化しているため、第三者がデータにアクセスすることはできない。HIPAA(医療保険の携行性と責任に関する法律)にも準拠しており、米国では医療記録と同等の保護が受けられる」と彼は説明する(脚注:Limitless PendantはiOS用アプリのみ公開済み。Android用アプリは2025年第3四半期にリリース予定)。

またLimitlessは、ユーザーに対して、家族や友人、会社の同僚など第三者のプライバシー保護の重要性を説明しており、音声を無断で録音せずに、明示的に同意を得るよう呼びかけている

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投資家とユーザーの反応

2023年10月の発売以来、Limitless Pendantは法律・規制をクリアできたすべての国で購入可能になっており、すでに1万人以上が着用している。また、注文済みのユーザー数はそれをはるかに上回る数に上る。米国各地に拠点を置く18人のリモート体制で運営されている同社は、今後2年以内に100万台の販売を達成する見通しという。

Limitlessは、これまでサム・アルトマン、ファーストラウンド・キャピタル、最近ではNEAといった著名投資家から3300万ドル(約48億円)を調達している。アーリーステージに特化したベンチャーキャピタル、Precursor Venturesの創業者兼マネージングパートナーを務めるチャールズ・ハドソンも、Limitlessの投資家で熱心なユーザーでもある。

シロカーから「完璧な記憶」というアイデアを初めて聞いたとき、ハドソンは興味を持ったが、すぐにはその真価を理解できなかったという。だがRewind AIが登場したときに、そのビジョンが明確になったという。

「週に70~80回ある会議の記録を高い精度で残してくれる会議アシスタントは、誰が何を言ったか、私が何を約束したかを追跡する上で非常に役立つ。Limitlessに投資したとき、会議アシスタント的なツールは他にもあったが、プライベートと仕事のあらゆる面で『完璧な記憶』を実現するというビジョンを持っているものはなかった」とハドソンは述べている。

「ダン(シロカー)は、それを完璧な記憶と呼んでいるが、私にとっては『完璧なプレゼンス』だ。ペンダントを着けていれば、メモを取る必要も、書き残す必要もない。ペンダントがすべてを記録してくれるからだ」。

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編集=上田裕資

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