起業家として社会と技術をつなぐ中、聴力の喪失が使命を変えた
シロカーは、グーグルのプロダクトマネージャーとしてキャリアをスタートさせたが、2007年に退職し、オバマ陣営に加わった。「オバマがグーグルで行った講演がきっかけだった。彼は、私たちがグーグルでやっていたような科学とデータに基づく手法を政府に持ち込みたいと語った。その話に感銘を受けた」と彼は振り返る。
「それは、あらゆる選挙キャンペーンの中で最初にウェブサイト上でA/Bテストを多用した試みで、バラク・オバマが優れた候補者であることを世界にどう伝えるのが最適かを試行錯誤したものだった。そして、彼は勝利した」。
この経験が、シロカーが最初に立ち上げたウェブサイトのA/Bテストを行う会社のOptimizely(オプティマイズリー)の創業につながった。同社のツールは、政治キャンペーンの手法を製品化したものだった。ちょうどその頃、彼の聴力に問題が生じ始め、最終的には同社を3億ドル(約438億円)で売却。データサイエンスの専門家ブレット・ベイチェックと「Limitless(リミットレス)」を共同創業するとともに、後にLimitless Pendantにつながるものの開発に乗り出すことになった。
「完璧な記憶」というコンセプトに向かう
同社の初期プロジェクトには、Zoom会議を文字起こしする「Scribe(スクライブ)」、コンピューター上のあらゆる操作を記録・理解する「Rewind AI(リワインドAI)」などがあった。「そこから、Zoom会議だけでなく、対面での会話や夕食時の会話といった現実世界での会話について検討を始めた。つまり『完璧な記憶』というコンセプトに目を向けるようになった」とシロカーは語る。「それが、自分が話したことや聞いたことをすべて記録・保存し、それを価値あるものにする『Limitless Pendant』の開発につながった」。
見くびっていたハードウェア開発
ハードウェアの開発は、シロカーが本当に見くびっていたと認めるほどの大きなチャレンジだった。何人かの投資家は、彼を思いとどまらせようとした。「Optimizelyのときは、実体のあるモノや中国の工場との調整なんて考えなくてよかった。ハードウェアを作る人たちは、ソフトウェアを作る人たちとはまったく異なるタイプなのだと、そのときになって初めて実感した」。


