英国の大学に出願した米国人の数が今年、過去最高を記録した。この背景には、外国人留学生への攻撃や研究費の削減、大学学長への圧力、一流大学に対する取り締まりのほか、多様性・公平性・包摂性(DEI)政策の見直しなど、米国のドナルド・トランプ政権による高等教育への介入がある。こうした政権の圧力の明らかな「効果」の1つは、高校卒業後の学業の継続を英国の大学に求める米国人の数が著しく増加したことだ。
英大学入学事務局(UCAS)によると、6月30日の締め切りまでに、米国人から提出された2025年度の大学入学願書は前年比約14%増の7930件に上った。これは2006年に集計を開始して以来、最多となる。
UCASは、全英で統一された共通の大学出願システムだ。米国の大学共通出願システムのコモンアップと同様、英国の高等教育機関に出願する多くの米国人がUCASを利用している。だが、UCASを通さない出願もあるため、今回の統計では、米国からの出願者数が実際より少なく集計されている可能性がある。また、UCASは学部入学のみを対象としているため、米国からの大学院生の流出も今回の数字には反映されていない。
UCASを通じて英国の大学の学部課程に出願した外国人留学生の数は、全体で前年比2.2%増加した。中国からの出願者が前年比10%増で過去最高を記録したことに加え、ナイジェリア(同23%増)、アイルランド(同15%増)、米国(同14%増)からの出願者も全体の増加を支えた。出願者数だけでなく、英国の大学が外国人留学生に出した入学許可の数も前年比9%以上と大幅に増加した。
一方、米国の大学は、今年の外国人留学生の入学者数が減少するとみている。例として、
●教育関連の情報サイト、インサイド・ハイヤーエデュケーションの報告によると、米国の学生ビザ(査証)の発給件数が激減している
●同サイトは、米国際教育者協会(NAFSA)が今夏、全米約150の大学を対象に実施した調査で、78%の教育機関が、学部と大学院の双方で外国人留学生の減少を予測していると伝えた
●米国際教育研究所(IIE)の報告書によれば、米国の大学の40%が外国人留学生の学部生の入学者数の減少を、49%が大学院生の入学の減少を予測している
IIEによると、2023年度には110万人を超える外国人留学生が米国の大学に入学していた。この数字は過去最高で、全米の大学生の約6%を占めた。新型コロナウイルスの世界的な流行で、2020年度に外国人留学生数が前年比15%減を記録したが、以降の3年間で留学生数は計20万人増加した。
しかし、トランプ政権下で、米国が人気留学先としての地位を失いつつある状況が浮き彫りになっており、欧州、オーストラリア、アジアの大学に人気が移っている。こうした変化に伴い、外国の大学への留学を選択する米国人学生も急増しており、英国が大きな受け皿となっている。



