国家安全保障とコンプライアンスの強化
GENIUS法はまた、米国の国家安全保障の強化も意図する内容となっている。この法律により、ステーブルコインの発行者は、マネーロンダリングを防止するための銀行秘密法(Bank Secrecy Act)の適用対象となり、顧客の本人確認(KYC)、取引の追跡、当局との協力が必須となる。
米国法を順守しない外国発行のステーブルコインについては、財務省がアクセスを遮断できるようになり、違法な暗号資産の利用を防止する措置が強化される。
広範な「暗号資産推進政策」の一部
GENIUS法は、トランプ政権がより広範な暗号資産の推進政策を進める中で登場した。トランプは3月、戦略的ビットコインの備蓄と国家のデジタル資産の備蓄の創設を命じる大統領令に署名していた。政権は、こうした措置を「分散型テクノロジーが主導する世界」における米国のリーダーシップを維持するために不可欠なものに位置づけている。
中央銀行デジタル通貨(CBDC)に改めて反対
トランプは、GENIUS法の署名セレモニーにおいて中央銀行デジタル通貨(CBDC)に明確に反対する立場を再び明確にして、「米国でCBDCが創設されることは決してない。私は絶対に認めない」と断言した。
大統領のこの姿勢は、同じ日に下院が「連邦準備制度によるCBDC禁止法(No Federal Reserve CBDC Act)」に加えて、デジタル資産市場におけるコモディティと証券の線引きを明確にする「CLARITY法」を可決したことで、さらに強固なものとなった。両法案は現在、上院での審議を控えている。
GENIUS法が暗号資産や米ドル、世界の金融にとって重要な理由
GENIUS法は、米国におけるデジタル資産規制の転換点であり、ステーブルコインに関する初の連邦法の枠組みを確立するものだ。
この法律は、ステーブルコインの準備資産を米国債に結びつけることで、米ドルの覇権を強化し、基軸通貨としての役割を未来に延長する構造を築くものだ。また、同時に消費者保護、金融の安定性、国家安全保障に関する新たな基準も導入され、米国がデジタル金融のリーダーシップを確立するという広範な戦略に沿ったものとなっている。


