AI

2025.08.06 08:15

Sakana AIとパズル系YouTuberの協業が示すAI開発のかたち

左からCracking The Crypticのマーク・グッドリフ、Sakana AI共同創業者兼CTO(最高技術責任者)のライオン・ジョーンズ、Cracking The Crypticのサイモン・アントニー

━━クロスワードやワードル、または「数独」のような数字パズルであっても、パズルを解くときに探しているとっかかりや、共通のパターンはあるのでしょうか。

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サイモン:それなりに経験があるので、ある程度、感覚的にわかります。温度計や矢印を含む数独だと、手応えのある場所がわかるのでそこからとりかかります。間違っているときもありますが、その感覚は経験にもとづくものとしか思えません。誰にでもできますよ。

視聴者も自分たちにできると気づき、絶対に解けないと思っていたパズルが解けるようになったのではないでしょうか。私たちがいただくメールには、「数独の変種を解けるとは思っていなかったけれど、解けたことが励みになっている。実生活で手に負えない問題に直面したとき、希望をもち続け、パズルと同じように取り組んでいる」というものがあります。

マーク:医師の方々から「『Cracking The Cryptic』がなければ、医師になれなかった。冷静さを保ち集中することや、論理的なアプローチについて教えてくれた」というメールをいただいています。メンタルヘルスで悩みを抱えている人の力にもなれていると聞きます。「外界から遮断されて気持ちが落ち着き、より良い生き方を送れる」という声も。とてもありがたいことです。
 
ライオン:お二人のチャンネルを見ていると、気持ちが落ち着くんですよね。
 
サイモン:今の時代、インターネットを見ると血圧が上がる人が多いのかもしれませんね(笑)。チャンネルではその点にも気をつけています。スキーに似ているかもしれません。集中していないと、滑れませんし、下手したら崖から落ちるかもしれません。集中力が心に平穏をもたらすのです。

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ライオン:先ほどのサイモンの話は、パズルを解く際の「直観」と表現できるでしょう。だって、こういう直観は必要ですよね。パズルを見て、「これを解くにはマス目を色分けする必要があるな」と考えるスキルを身につけるわけです。そして、AIが直観を働かせる瞬間を世界が目の当たりにしたのが「AlphaGo」だったように思います(編集部註:2016年3月9日〜15日に、Google DeepMindの囲碁AI「AlphaGo」が、李世ドル九段に4勝1敗で勝利した歴史的な対局。AIの可能性を示し、深層学習や強化学習の発展を加速させた)。

碁はブルート・フォース(総当たり)では勝てないゲームなので、「これは良い手だ」「これは悪い手だ」と検索に知らせるニューラルネットワークが必要になります。それで検索範囲を狭められるからです。

このプロジェクトでは、それと同じことをしようとしています。サイモンとマークがパズルを解くことで身につけた「直観」を捉え、そのデータからAIに抽出しようとしているのです。そして最も重要な意図の一つが、「数独を解けるなら、それ以外にも応用できるのではないか?」という点です。

それに、AIモデルの推論能力を強化できるはずです。数独は多種多様だからです。それぞれ解くプロセスが異なり、人間の手によってものすごく興味深い方法で制約を組み合わせて作られています。現在のモデルよりも少し進歩した独自のAIができて、それを別のタスクに合わせてチューニングすれば、よりうまく機能するでしょう。本当に難しい問題に取り組む方法の直観が、ニューラルネットワークにより深く焼き付けられるからです。

次ページ > ゲームを解くことを超えた、「学習する方法を学ぶ」こと

文 = 井関庸介 写真 = 能仁広之

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