━━今回のコラボレーションのかたちについての質問です。人気ブログ「Daring Fireball(デアリング・ファイアボール)」を主宰するジョン・グルーバー氏が、アップル社のAI「Apple Intelligence」開発の遅れを批判して話題になったことがありました。一部の識者は、遅延の要因として同社の秘匿性を挙げています。それがサイロ化につながり、部門間の連携不足と、リアルタイム開発の限界を招いているのではないか、という指摘です。その点、皆さんの“実験”は背景こそ違いますが、暗号解読者のほか、パズル解答者や言語学者、数学者が集められ、最終的にチューリングマシンを生み出した英ブレッチリー・パークでの協業を思わせる分野横断性があります。ライオンさんは、開発過程の多くを共有することで知られるグーグルでの在籍経験があります。AI開発ではこの種の開かれた協力関係が主流になる可能性はあるのでしょうか。
ライオン:進歩を遂げたいなら、明らかにこの手法がその一つだと感じています。推論は、現在AIコミュニティが最も力を入れて取り組んでいることです。私たちが今後公開するのも、新しい推論モデルです。今までにも申し上げてきたとおり、私はグーグルでとても幸せな時間を過ごしましたが、今回のような試みを実現するのは難しかったでしょう。
━━グーグルであっても、ですか?
ライオン:ええ、自由が必要だと感じていました。どうしても煩雑な事務手続きがあるわけです。それに動画データが公開されているところで、勝手にAIモデルのトレーニングに使うことはできません。でもSakana AIのCTOとしてなら、メールで(チャンネル運営者のマークとサイモンに)「ご協力をお願いできませんか?」と尋ねるだけです。
もう一つ、お二人に感謝したいのは、私がこのプロジェクトを心から大切に思っていることを理解してくれている点です。お願いしたからといって誰もがこれほど温かく、オープンに協力してくれるとは限りませんから。でも、このような開かれたコラボレーションこそが、進歩を生み出す方法だと私は思っています。
サイモン:ブレッチリー・パークについてコメントにはすっかり恐縮してしまいます。同時に、興味深いです。あの方々と一緒に言及されるだけでも光栄ですよ。
マーク:偽者の気分です(笑)。私たちはAIのコードに何も貢献できませんからね。AIについて何も知らないようなものです。私がやっているのはナンバーパズルやクロスワードパズルを解くことと、それについて部分的に専門家になりつつあることくらいです。そもそも、プロジェクトの力になっているかどうか。
サイモン:それはどうだろう。マークはプロジェクトへの自分の貢献を過小評価している気がします。というのも、彼には「人間らしさ」についての洞察があるからです。AIモデルのアウトプットを見て、「いや、これは違うな」と言える、かなりユニークな立場にいます。Google Geminiが4×4の数独を解くのを見て、「まだ小さな一歩に過ぎないけれど、なかなかやるね。でも、人間ならこうは解かないな」とつぶやいたときのマークがまさにそれでした。
ライオン:それは重要な指摘ですね。データを入手してベンチマークを公開したからといって、これで終わりというわけではありません。私たちは協力し続け、研究の結果を共有し続けます。アウトプットがどれほど人間らしく見えるか、あるいは推論がどの程度優れているかについてのサイモンとマークの意見は、これからますます重要になっていくはずですよ。


