起業家精神がもたらした、米サミットとの提携
アケソが世界の製薬業界の注目を集めるきっかけとなった最大の要因は、がん治療薬イボネシマブの開発だった。同社はこの薬を第3相試験まで進め、2022年には米国臨床腫瘍学会(ASCO)という大型カンファレンスで有望な研究結果を発表したが、当時は大手製薬企業が中国企業との提携に消極的だった。
サミット・セラピューティクスの取締役で、長年バイオテック業界で弁護士を務めてきたケン・クラークは「すべての製薬企業がイボネシマブの採用を見送ったのは、主にそのデータを信用しなかったからだ」と語る。
しかし、幸運だったのは、サミットの共同CEOであるマキ・ザンガネとボブ・ダガン(いずれも現在は米国のビリオネア)が同年、フェーズ3の段階にある新薬候補を世界中から探すよう自社のチームに指示していたことだ。そして中国出身の幹部フォン・クロウが「中国を見てみよう」と提案し、数カ月以内にサミットはアケソの薬に的を絞った。
シャと、サミットのザンガネとダガンの3人には実は共通点があった。シャが2000年代初頭にセレラ・ジェノミクスで携わっていた薬の候補が、後にダガンとザンガネが運営していたバイオテック企業の「ファーマシクリック」に買収されたのだ。ファーマシクリックは、「イムブルビカ」と呼ばれるその薬の慢性リンパ性白血病の治療薬としての承認を、2013年にFDAから取得し、大ヒットさせていた。そして2015年に製薬大手アッヴィがファーマシクリックを210億ドル(約3.1兆円)で買収した。
こうした縁もあって、シャはザンガネとダガンに信頼を寄せていた。この2人は、バイオ製薬業界の経営者としては異色の経歴を持っており、ザンガネは歯科医から転身した経歴を持ち、ダガンは連続起業家で、クッキー会社や刺繍キット販売会社などを経営した後に、手術用ロボット企業への投資を通じてザンガネと出会っていた。両者はすぐにお互いの起業家精神に共鳴した。「彼らが私を見つけてくれた。私たちは、本当にぴったり合う仲間だと思った」とシャは話す。
アケソとサミットは2022年12月に、サミットが前払いで5億ドル(約735億円)、さらに最大45億ドル(約6615億円)のマイルストーン支払いを行うライセンス契約を締結した(サミットは現在、FDAの承認を目指して独自にイボネシマブの第3相試験を行っている)。また、シャはその翌月にサミットの取締役に就任した。
「彼女は最初から、新薬の発見から製造に至るすべての工程を自社で完結できる会社を構築していた。それがアケソにスピードや柔軟性、コントロールをもたらした。タイミングがすべての業界でこれは非常に重要なことだ」とザンガネはコメントした。
臨床試験に成功し、アケソの株価が約16%上昇
昨年9月にサンディエゴで開催された肺がんカンファレンスで、アケソは特定の種類の肺がん患者を対象にメルクのキイトルーダと直接比較した第3相臨床試験の結果を発表した。アケソの薬を投与された患者は、がんが再発するまでの期間の中央値が11.1カ月だったのに対し、キイトルーダを投与された患者は5.8カ月だった。
アケソの株価は、この発表の翌日に約16%上昇した。シャのもとには、中国や米国各地の友人から祝福のメッセージが相次いだ。
高齢化が進む中国社会に対応する治療薬の開発にも力を入れたい
シャはさらに大きな目標を掲げている。アケソはすでに十数種類の自社開発薬を臨床試験中であり、彼女はがん治療薬の枠を超えて、神経変性疾患や自己免疫疾患など、高齢化が進む中国社会に対応する治療薬の開発にも力を入れたいと考えている。そのために必要なのは、新たなテクノロジーと新しいタイプの薬への投資だとシャは述べている。「私たちは、そのような取り組みに加わりたい。そして偉大な企業になりたい」と彼女は語った。


